まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その37.stylus1s 小型サンニッパ

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◆出会い

時は戦国時代。ではなかった、2013年。オリンパスからstaylus1というデジカメが出ました。見た目が兜をかぶった明智光秀に似てるのでつい時代を間違えてしまった。 

コンパクトデジカメの覇権争いの場にオリンパスが送り込んだこのおサムライさんは、f値2.8/28-300mm相当のレンズを驚異的に小さなボディに搭載。その勇名は遠く樺太の奥地で草を食べていたウサギさんにまで届いていたという。

そして、時がめぐること1年。このマイナーチェンジ版がstylus1sです。見た目での違いはグリップ部の模様。オリジナルでは斜め掛けサメハダ模様をしており、どうにもそれはエレキキッズに媚びすぎだろうと思ってましたが、それが普通の革シボ模様に変更されており、品位ある大人へと成長してることがわかりました。

しかし値段が高いなあ、それほどの使いこなしをするかなあ程度に見てましたが、ファインダーが電子式(キッズ達はEVFというのか?)であるところがXQ1のチグハグな操作性に戸惑っていた心に共鳴。エイヤッと手に入れ(てしまい)ました。

◆唯一無二のカタチ

こういう10倍を超えるレンズを備えたデジカメはこれまでにもありましたが、そのどれもが一眼レフに迫るほど大きく、その割に電子ファインダ-の見え具合は貧弱なものばかりでした。ところが、stylus1sは、レンズ自体が小さく、そしてファインダーを覗いた時の像が大きくクリアであることが他にはない特色として際立っています。

特に、ファインダ-は背面液晶を全く使わずに覗くことオンリーで撮影に臨んでも十分に用を足せるレベルにあると感じました。そのおかげで、一眼レフを持ち運ぶお供に携行しても、似たリズムでパシャパシャできます。

具体的にいうと、一眼レフを使うときは対象に集中したいがために背面の液晶を表示オフにして、撮影が終わったら画像が表示されて消去するか残すかを選択するというルーチンが身についているのですが、stylus1sは設定をいじることで全く同じことができます。と、いうなれば小さな一眼レフみたいなものです。

昔、キャノンのEOS1にでっかいf2.8の300mmレンズをつけていたイカしたおじさん達を目にしていた者としては、同じことが1/4くらいの大きさで達成できてしまう事自体が嬉しい。

◆300mm f2.8 の感激度合い

普段は135フィルムサイズ換算で40~70mmの焦点距離が好きなので、望遠それも300mmというのは感覚的には特殊な画角との思いがあります。それならば、別に300mmまで届くこのデジカメでなくても良いのに。冷静に指摘されたら「ウググ。」と言葉に詰まるわけだが、論理を超えて、この小ささに300mmf2.8が収まっているというその事実に it's a magic な魅力があります。しかも、ズームを繰り出してもビヨーンと3倍の長さに伸びきるわけでもないので、外からみて「アイツ、どこのぞいてるんっだッペ。」みたいに見えないところも良いです。「あ、あ、あの、あそこにいるメジロを撮っているんですう。」といちいち言い訳しなくて済むワケです。

300mmの画角を覗いて(電子ファインダが見やすいのでまさに覗く感覚を楽しめる)みると、アレ?と ひとつ気づくことがありました。それは、思ったより望遠に見えないな、ということです。

大昔、ニコンFGにオオサワ商会の200mm上限くらいのズームをつけた時は「おお」。さらにEOS用に300mmのズームを手にしたときには「おおお。」と感激したものですが、その頃の印象が蘇ってこない。

その理由は、デジカメになってから撮影画像をすぐ拡大して表示してしまう自分のクセにあると思い至りました。高密度の画像素子でとらえた画像なら、8倍程度に拡大してもそこそこキレイに見えます。元の画角が50mm相当なら、その時点で400mmを覗いているのと同じこと、これに慣れているため300mmの感激が薄れてしまう脳内回路が形成されてしまったのかもしれません。

では、stylus1sの300mm画像を8倍に拡大して表示したらどうか。なんと2400mmを覗くのと同じものを背面液晶でみることができます。

さぞかしワクワクするかといったら、もとの画質が300mmテレ端では解像力やコントラスト不足であるため8倍まで拡大する気は起きませんでした。

◆画質の傾向 普通に使える

画質の傾向としては、派手に色を出すのでなく中庸なトーンで対象をとらえるタイプです。解像度はやや甘く、それをコントラストで締めてシャープ感を演出するわけでもないので、自然なものが自然に写ります。絵を造った印象を受けないのは好ましい。

撮像素子の大きさは1/1.7インチ。2010年前なら高画質で通る大きさでしたが、2014年というと1インチが普通に使われ出した頃なので、むしろ画質訴求の点からは敬遠されるサイズになってしまいました。ところが、実際には写真を記録以外の楽しみとして残せる実力を十分に持っています。素子を活かすバランスがデジカメ総体として出来てさえいれば その大きさに拘る意味はない、というのはペンタックスのQを手にしたときに感じたことですが、同じことがこのstylus1sにも言えます。

ところで、オリンパスのデジカメというと、一眼レフも含めてとにかく白飛びするという先入観を持ってましたが、このstylus1sは普通に撮るには問題ないということを実感しました。ただ、他のメーカよりもハイライトの余裕はありません。

◆操作してみて

このデジカメもレンズの周りに回転リングがあり、それで露出やマニュアルフォーカスを操作できます。そう、前の記事で紹介したXQ1と同じです。
では、その感触はどうかというとネットリを演出するのでなくスムーズにダイレクトに反応するイメージです。人それぞれの好みはありますが、この方が使いやすく感じました。さらに電子ファインダ-を覗くことでデジカメの保持が確実になるので、回転リングの操作が手ブレを誘発する不安からも開放されます。
撮り方としては、電子ファインダ-を覗く前にズーム位置を決め、絞りを回転リングで選び、上面右側についているダイヤルで露出補正をかけて撮影します。絞りも露出も気にしなければファインダ-を覗いてすぐに撮ることができます。
各種のダイヤルのクリック感やスムーズ感、シャッターの押下フィーリングも心地よいので撮影に集中することが出来ます。
そして、特筆するのはやはりファインダ-。144万画素なのでその倍の画素を持つハイエンドな見え方はしないように思えますが、クリアに良く見えます。外光が目とファインダーの間から入り込んでいるハズですが、それが像のコントラストを下げて見難くするということがありません。自然に対象を覗きみることができます。
電子ファインダ-というのはいくら画素があがっても光学ファインダにくらべればどうしてもギザギザ感や色味の違いは出てしまうので、その性能の向上を期待するより、スキマから入り込む外光で見易さが影響受けないことが実用的には大事と思いますが、どういうカラクリなのか、このstylus1sはそこがしっかりしています。
このように、自然なふるまいができるコントロール性・視認性の良さが、一眼レフと同じルーチンでの撮影を支えていると感じました。
さらには、このデジカメは背面液晶がバリアングルになっているので、古来ゆかしき一眼レフには真似のできない角度からの撮影も難なくこなすことが出来ます。

◆もう少し、服装にこだわったら。。

とは、50半ばのオジサンならばいつも言われることですが、この言葉がそのままstylus1sにも当てはまります。グリップの模様が鮫肌柄から皮革調になり、ベネトンからユニクロへと普通のファッションになったことはなったのだが、外装をなすプラスチックの質感が低い。
どれくらい低いかというと、カバーの端部にそのまま成型時のバリが残ったようなレベルです。見た目だけでなく、実際に握った時にも前面カバーと後面カバーとの接合に鋭利な段差を感じ、手の平が痛い。なので、ここを黒テープで塞いて使ってました。カバーのパーツには良く見るとヒケがあり、塗装ツヤの均質感もイマイチ。ひょっとしたら塗装してないのかもと思ってしまう。
このあたり、たとえばペンタックスのガチガチのパーツ整合精度に慣れている身には驚きです。まあ、ヨドバシやK’sデンキで実物を触っている限りにおいては店内照明や雑音や自分自身の異様な高揚感のせいで細かいことには気づきませんが、実際に使う時になるとモノとしての出来栄えがやっぱり気になるワケで、その点ではかなりガッカリしてしまいました。
ダイヤルも、操作感は良いのですが黒塗りな中で外周エッジだけをアルミ(と思う)むき出しにしているので安っぽく目立って質感を下げています。黒の油性マジックペンで塗りつぶしてもすぐに剥げて顔を出すので始末が悪い。
感覚の話なので、この処理をイカすと思うムキもあるかもしれませんが、シックで黒い鎧兜をまとった明智光秀だからこそ物申さぬサムライの凄みが出るところを「ボクはここにいましゅ。」とばかりにラメ色の鎧糸を使ったのでは成り上がり武士のように見えてしまい部下の心も興ざめしてしまう、あげくの果てには豊臣秀吉にやられてしまう。とは日本歴史の教科書も教えてくれているのに。。うぬ、なぜオヌシは同じ過ちを繰り返してしまうのか。
全体のデザインはファインダー部を収めている兜もカッコよくイカしているのに、その最終的なコーディネートのところで損をしていると思いました。ここを、もしライカがプロデュースしてたら中身よし外見よしで本当の唯一無比に慣れたのにと思うと残念です。

◆総合点:50点

高倍率ズームを明るいf値で実現し、小さく軽く可搬性が良く、機能や操作感も優れていて、画質も自然。これのどこに不満あるかというと、やはりその外装プラの質感。この一点だけで全体の印象を下げてしまいました。
写真機に限らず人の手に触れる道具、これから自分の手に馴染ませていこうというものには 見て触って満足する品位も大事な要素だと思った一台でした。

◇次回:もはや道楽、しかし使えば価値がわかる豆野郎。