まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その38.Q-S1の一本勝負

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◆出会い

このQ-S1はペンタックスのQシリーズの中で一番新しいデジカメになります。ファインダが無い事を理由に初代Qを手放した身としては、このQ-S1も同様であることから手にとる対象になるとは思ってもみませんでした。

むしろ、QやQ10に付いていた右側のグリップを無くして、ローライ35とライカの中間をとったかのように丸ポチの出っ張りを設けたことに対し、けしからんことだと思っていました。機能よりも見た目(それもモノマネ)で意匠をもて遊んでおる、と。

ところが、秘密結社(ではないと思うが)K’sデンキの心理操作、「てんじひんかぎりずーむれんずがふたつついてにまんごしぇんえん作戦」にまんまとひっかかり15分後には無意識に外箱を開梱しておりました。単焦点レンズ01 PRIMEを傍らにおきながら。

◆初代Qとの違い、アレコレ

1.画角

ボタンやダイヤルの配置がQと同じなので操作もそのまま。ただし撮像素子が1/2.3インチでなく1/1.7インチのため、01 PRIMEの画角が35フィルム換算でいうと47mmでなく39mmへと広角側にシフトします。

47mmの画角というのは、ペンタックスの一眼レフに31mmリミテッドレンズをつけた時とほぼ同じであり、50mmよりも客観的に見つめることができるので気に入っていました。それが、39mmになってしまうのはどうか?という気がしましたが、実際にレンズをつけて背面の液晶で見ると昔懐かしいコンパクトカメラの画角38mmを思い出し違和感はありませんでした。

2.画質

この画角の変化以上に大きな違いを感じたのは画質です。特に、02 ZOOMの標準ズームをつけたときにQでは甘く太い描写で積極的に使うには躊躇するイメージでしたが、Q-S1につけるとシャープ感とコントラストが向上しているのが明らかにわかりました。これならば、日常の切り取り道具としてズームをつけたままでも後で撮影された写真を見てガッカリすることはないレベルだと感じました。また、ISOの高感度域の実用性も、Qが400程度だとしたら800くらいまでは使えます。

このように、標準ズームや感度ISO800を日常的に使えることで、小さいだけの特殊なデジカメでなく気兼ねなく使えるスナップ装置としてより使用領域を広げたものに仕上がっています。

3.操作性

ダイヤルの種類や配置は同じです。しかし、その高さや位置が少し変わってます。特に、背面右の回転ダイヤルの位置が高くなったことで親指での操作感が向上しています。一方、残念なのはシャッターボタンのリリースまでの高さが、Qの2代目のQ10から変わってしまったことです。Q10では、シャッターを押す指の腹がシャッターボタンのまわりのリングベゼルと同じ高さになったときに切れる位置だったので、押す瞬間の微妙なコントロール(つまり、切るタイミングの見切り)がし易かったのですが、Q-S1ではベゼルより高い位置にリリースポイントがあるので調整がしづらくなりました。ただ、リリースの位置が低いと、シャッターを押したつもりが実は押されてないという事も起きやすいので、確実にシャッターを切る意味でリリースの位置を高くしたというのなら仕方ないかもしれません。

4.扱いやすさ

 写真機は三脚に設置してるのでなければ自分で手に持って使う機械なので、握り易さが大事なファクタ-となります。特に小さいカメラでは、手の中からすり抜けてスポッと落ちる危険もあるので左手側にあるグリップの有無、あったとしてもその形状の良し悪しは大きなカメラ以上に気になるところです。

それなのに。そのグリップをなくして丸ポチなどつけてしまったQ-S1はどうなのか。

結論からいうと、丸ポチに左手の中指がうまくひっかかるのでスポッ、ガシャーンという恐怖は意外にも感じずに済みます。だからといって握りやすいものでなく、なんか余計なものに指がひっかかっているという受け身な印象を持ちます、自分から握るという能動的な感覚は味わえません。見た目に調和をとった意匠かもしれないが、回転するわけでもなくボタンやスイッチを兼ねてるわけでもなく、ただ赤外線受光部を囲んでいるこの丸ポチ君の気持ちを理解するにはこれからも長い時間がかかりそうです。

◆Q-S1の得意分野とは

さきほど、02 ZOOMをつけても日常の切り取りとして使える画質になっている話をしましたが、あくまで普通の写真をとるという視点での話にすぎません。

それに対し、01 PRIME単焦点レンズを付けた時には、コレにしかできない表現を生み出します。いうなれば、このレンズとの組み合わせにこそQ-S1を使う醍醐味があります。

どういうことかというと、レンズ自体が小さく薄いため、Q-S1の小ささを阻害せずに装着した状態でどこにでも軽い気分で持ち出せること。ジャンパーのポケット程度ならば入れたまま持ち運べます。本体自体が小さいデジカメは他にもありますが、意外とレンズが大きくつっかえるためにポケットに入らない事が多いのに対し、Q-S1は撮像素子が小さいことが功を奏しレンズも小さい。そして軽い。

そのうえ、Qのレンズには40.5Φのフィルター溝が切られているので、保護フィルターを付けっ放しにしておけば嵩張るレンズキャップをつけずに取りまわせることも速写性に貢献しています。

また、最短撮影距離が20cmと短いため、距離が近すぎて焦点が合わないというイライラを感じずに済みます。素子が小さいだけに被写界深度も深いので、f1.9の開放絞り近くで撮っても対象の外形がわかる像を結びます。同じ光量のもとでは、ISO感度を下げてシャッター速度を早く設定した状態で撮ることができ、結果的にブレや荒れのない写真をおさめる結果となります。

そうして撮影したこの1/1.7インチの写真をAPS-Cサイズのものと撮り比べてみると、キャビネ程度ならば差を感じることはないと思います。ただ、諧調の滑らかさや画像全体の柔らかさというならAPS-Cの方が優れているのは確かですが、対象と副対象との対比のキレを狙いとするなら、むしろK-3よりも撮影目的にあった一枚が撮れたりします。

Q-S1自体は撮像素子の小ささをカバーする画像処理がされているためなのか、全体的には硬い描写ですが、01 PRIMEというレンズ側の描写の方は二線ボケがなくなだらかな描写をしているおかげで、背景との距離をとれば柔らかな雰囲気を出すこともできます。01 PRIME,このレンズの実力は相当に高いことを撮っていると実感しますが、Q-S1との硬軟バランスによって中庸で自然な写真を生み出すことができます。

このデジカメとレンズの組み合わせについてもう一つ言えるのは、ラフに使えるということです。ヒャクメルゲみたいなレンズバリヤがないのでそこが壊れる恐れはゼロ、ズームでないのでウイーンウイーン作動させることの耐久性への心配もゼロ、万が一ホコリが内部に入ってもレンズ交換式なので外して清掃すればOK。そのうえ、Q-S1はプラスチックのクセに大変剛性感が高い。液晶はチルトでもバリアングルでもなく固定されているので、器用なマネはできなくても可動部が壊れること自体がない。

 ファインダが無いので覗くことに慣れた者としては写真を撮る気構えみたいなものを感じられないのは残念ですが、撮影された一枚一枚をみると小さなサイズで良くこんな大きな仕事ができるなと感心します。普段は01 PRIMEレンズを付けっぱなしにしておいて、予備にズームレンズを2本、標準と望遠と持ち出したとしても全体が軽く小さくまとまるので身軽になります。実際にはズームレンズを使う機会はほとんど無く、01 PRIMEだけしか使わないことが多いです。

◆買う人と使い方

問題は、このデジカメはどういった人が使うのか? ということです。レンズ交換ができることがメリットだが、それを望む人はもう少し大きなモノを選ぶかもしれません。なぜなら、小さすぎることからくる先入観として「どうせ、オモチャ。」に見えてしまうからです。01 PRIMEにしても、前から見るとレンズ前玉の大きさは納豆の大粒一つくらいにしか見えず、まさかこれがFA31mm limitedに似た描写をするとは上野のシャンシャンでも思わないでしょう。

Q-S1自体は本当に正真正銘レンズ交換式デジカメなので、一眼にできるメニューはRAW現像も含め一通り揃っています。しかし、これを使いまわす人ならば、さっきの話に戻りますがやはり大きなガタイを選ぶのではないでしょうか。

◆壊れにくい、からこその一本勝負

このデジカメはボディ単体だけだとファインダも無いし単に小さいだけのシロモノという見方もされかねませんが、01 PRIMEというレンズとバロムクロスすることで他にはない陸の王者へと変貌します。

まずはレンズ。第一に、ズームでないから正面からグニュッと押されても機構が壊れる心配がありません。第二に、保護フィルターがつけられるので前面保護バリヤのような華奢な部品が壊れること自体ありません。それでいて、均一でしっかりした写りをもたらす結像性能、F1.9の明るさと内蔵NDフィルタが可能にする広範な光量条件への対応力を持っているので、確実に写しとめられる安心感があります。

本体の方についていうと、手ブレ補正と素子の小ささの両面が寄与するカメラブレ耐性の強さ。ペンタックス伝統のわかりやすい設定メニュー。そして、独立したバッテリ室とSDカード収納部に代表される堅牢な構造。わかり易いマニュアルフォーカスの操作性。それらの一つ一つが使う者にとってはヤワでなく使いやすく壊れにくいイメージをもたらしています。

それなのに。丸いポッチ。これがくっついているのがどうも違和感がありすぎる。

丈夫さに頼って乱暴に使っていれば、いつかはこの丸ポチ君をどこかにぶつけてオサラバさせることができるかも。なんて邪な考えもフッとよぎったりします。

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◇次回:使いやすそうなフリしおって。なじめなかった自分が悪いのか。