まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その39.G5X ファイブの称号

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◆出会い

スタイラス1Sという兜を被ったようなデジカメを持っていましたが、このキャノンのG5Xもオサムライ顔をしています。向こうが三日天下の明智光秀なら、こちらは長期政権を築いた徳川家康を想起させます。

形が似ているのは電子ファインダを同じくポコッと乗せているからですが、つまみやボディの細かな造形からは「さすが征夷大将軍は違ーう!!」 と思わせる質感が感じられます。ヨドバシカメラで(ペンタックスのカメラを首から下げながら)このG5Xをいじった印象はファインダーの見えが良く操作しやすいこと。

そんなG5Xをひょんなことからモニターする機会に恵まれました。厳密にいうと所持した写真機の歴々に入れるには憚れますが、長いブランクを経て手にしたキャノンでもあるしここで取り上げようと思いました。

◆キャノンの5

昔、フィルムの時代にEOS5という一眼レフがありました。世界初の視線入力という武器をひっさげて登場したことからゲテモノかと思いましたが、その実力は非常に高くオートフォーカスカメラの地位を一段とひきあげた功労者でした。そして、今はEOS5Dが標準的な一眼レフの代表として君臨しています。触った事ありませんが、そうらしい。

そんなこんなから、同じく5の称号を持つこのG5Xはキャノンとして相当に力の入ったものだと推察します。電子ファインダをレンズの真上に置くことで一眼レフっぽいイメージを持たせつつ、その内部には1インチの大きな撮像素子を備えています。

この1インチというのがミソで、今はこのサイズでないと高画質なコンパクトデジカメとは認めてもらえない風潮があるように思えます。実際に撮影してみれば、1/1.7サイズのスタイラス1SもペンタックスのQ-S1も高い性能を持っていると思うのですが、まあ、悪かろうはずがない性能だろうと撮る前から安心させる効果はあるのでしょう。

◆5の画質

最初の一眼レフをFTbで始めEOS100ではあちこちを撮りまわった経験からキャノンには好意的だったのに、EOS7の視線入力をめぐる仁義なき戦い(大阪怒涛編)に疲れ一歩引いていた期間がありました。それから10年以上がたち、再び手にすることになったキャノンのG5X、その画質はどうでしょうか。

一言でいうと太い。です。K-3やペンタックスレンズの繊細な線になれていたので、この思い切りアメリカンな太さには最初驚きました。これはこれで、モノの実在感というか表と裏を描ききるような迫力があります。

ただ、マクロ域ほどではなくても近傍を撮ると、この太さが更に増長されてぺったりした印象も受けます。近傍の写真というと、昔のマイクロニッコールの作例写真、カリカリと目に見えない小宇宙を書き出していたアレが頭にあるので、このどこに焦点があってるかもヘタするとわからないようなこの画質は「ひょっとして性能が低いのではないか」との疑念を抱かせる。。。いや、コンパクトデジカメが接写にも使われることを知っているはずのキャノンがそんな事はありえない、これは味に違いない。ただ、アメリカンの中でも物凄く粗野な方向にありました。

遠景や中景を写してみても、繊細さではなく大らかさなイメージです。色使いは色鉛筆の薄さではなく、絵具でしっかり塗ったような厚みがあって気に入りました。でもやっぱり、この太さ。写真機自体は精緻なイメージで組み立てられているので、このギャップはいやはやどうもビックリ仰天です。

◆操作感

について、チマチマと傍若無人で無責任な発言を吐き捨てることが多いのですが、このG5Xに関して言うと所有にいたったわけでなく付き合いも短い間だったのでこれといって述べることはありません。

そうはいっても、ダイヤルの操作性は回しやすくて良かったです。特に、右前方についているダイヤル、この位置やカタチはニコンの一眼レフDfを連想させるのですが、それに比べると大変使いやすい。Dfは一時、そのシャッターを押したときのキレ感が気に入りペンタックス全部売り払って買おうかと検討したこともありましたが、この右前ダイヤルが固いし指は届かないしでゲンナリしてやめました。そのイメージがあるものだから、G5Xのダイヤルを回した時にはあまりの使いやすさに驚きました。

EVF、電子ファインダは見やすいですが、スタイラス1Sの解像度の低いファインダでも十分ではないかと思えました。長年にわたって光学ファインダがカラダと脳の基準にあると、電子ファインダは実物との色味の違いやコントラストの違いが目について良し悪しの判断基準を下げないと写真機も自分も両方悲しい状態に陥ります。

調整すればよりリアルに近くなるのは当然ですが、違う風景をのぞくとやっぱりコントラストの違いが目についてしまう。そういうものだと大人の気持ちで接してあげれば良いのだが、ファインダを覗くというのは最も子供っぽい行為の一つなので、なかなかそのような達観した境地に立つことができずにいます。

おしなべて操作感や使いやすさに不足はなし、このあたりはさすがキャノンだと思いました。

◆相性

では、このG5Xは最終的にどうしたかというと、我が手をすでに離れて遠い彼方へと旅立っていきました。今頃、心豊かな御仁にめぐりあい幸せに暮らしていることと思います。

なぜ手放したか。それは、もう、『シャッター』だけが理由です。とにかくフィーリングにあわない。なんというのか、ペチッという感じで一瞬を切り取るにはあまりに安っぽい。しかも、そう感じるだけでなく、そのペチッという音も聞こえる。レンズシャッターの音ではない。シャッターボタンそのものの音なのであった。

そんなはずはなかろう、これは個体の問題なのさ と思い、実は交換してもらいましたがソチラもペチッ。うーむ。

G5Xについてはあまり書くことが無い、というか正直どんなデジカメだったかあまり覚えてないのも、このシャッターフィーリングの違和感だけが頭の中を占有し残りの記憶が吹き飛んでしまったためです。

一応、同じような思いをした人はいないかとネットサーフィンしてみましたが誰一人いらっしゃらない。こうなると自分の感覚が特殊なのかも知れませんが、もっとも重要な部分のフィーリングが合わなければ仕方ありません。徳川家康に似たG5X、おさらばして1年半が過ぎました。

◇次回:彼は言った。「とりあえず持っとけ。悪い思いはしないはず」と。