まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

【久々】その42.D750 あ、カメラだ

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◆出会い

孤高の一眼レフ:ペンタックス。 ズーッと使ってきて、もう一生ついていくからね。その思いでKー70の事を書いてから早3年半。気がついたら、棚にはひとつのペンタックスも居なくなってました。シェー!! チェストー!!

代わりにあるのはニコンのD750です。3年前に買いました。ペンタックスカメラの皆さんはその獲得資金のために金銭トレードの運命をたどることに相成りました。今頃はそれぞれの立場で第二の舞台に立ちご活躍されていることでしょう。

と、血も涙もない言い方をしていますが、ここに至る「なぜ、D750になったか」について振り返ってみようと思います。

ペンタックスは好き、でもカメラ自体が好きである性分なので三ヶ月に一度の楽しみでアウトレットモールに行った時にはニコン店を必ず巡りそこにあるカメラ達をペタペタ触ってました。一番ペタペタしていたのはニコンDfです。シャッターを切った時の音とショックが何とも心地よく、何回もパシャパシャしていました。それに比べ、他の一眼レフ(ギリ庶民派プライス)はD750も含め音の余韻が長く感じどうもリズムが違う気がしました。

ではDfを買い増すかというと、ニコン店にあった展示(&勝手に操作?)用個体はシャッターダイヤルや露出補正ダイヤルの節度がバカバカになっていて「いや、せっかくのダイヤルが早晩こうなるようでは気が失せますたい。」でした。ひょっとしたら、我先にとペタペタしていたオヤジ達の中にキャノン贔屓の巨漢が混じっていて「クイッ」とワザと破壊して行ったのかもしれないが真相は闇の中です。もう一つ、DfのガタイはニコンFM系のソレに近い感じがあるように見せかけてはいるが、前後方向の厚みが大きい。シャッター感触に興奮した後で冷静になるとカメラというより箱を持っていることに気づき、それも興ざめの一因でした。カメラのような箱ではなあ、と思っていて傍らのD750を見て「アレ?」と気づいたことがありました。そして、「コイツこそ実は箱でなくカメラではないか?」と急に興味が湧いてきました。それは何か。

それは、撮像面マークの位置です。

40年以上も前にコダックポケットカメラを使った時からフィルムは一番後ろにあるべし、というか、「光が入って、レンズを通って、最後は感光体に届いてアウトプット」という順序で写真がなりたつものだという思い込みに支配され、デジタルカメラの撮像面の後ろに電子回路の厚みがあるというのはどうも変な気がしていました。「口から入って、お腹をとおって、最後は○○○としてアウトプット」という喩えが適切かどうかわかりませんが、その後ろにある電子回路基板はいわばオムツか海水パンツのサポータみたいな感じでしょうか。 しかし、それは見た目のこだわりに過ぎず、電子回路がなければ像ができないのだから原理的には仕方がない。ペンタックスのK-3もメカメカな写真機のルックスをしているが、撮像面のマークは結構前の方にありました。全く気のせいでしかないことだが、光を通る距離が短くそれでは不十分なので後ろの電子回路で何か修正しているのでは。。頭で考えたら光を通る距離自体が短くなることなんて無いハズですが、マークから後ろの距離が結構あるのでそんな風にふと思えたりしたわけです。

で、D750。この撮像面マークは「ゲ。」と思うほど後ろにあります。これをペンタックスのK-70と比べると「ゲゲゲ。」となるほどびっくりします。更に、それでいて液晶のチルト稼働機構がその後ろに控えているのです。デジカメのくせにどうなってんのコレ?と思いました。暫くの間、その仕組みを知るべく触り続けているとニコン店のお兄さん二人が寄ってきたので、D750のことをいろいろ聞いているうちに、

・ミラーダンパーに凝ってないので撮像面を後ろに持って来れた。

・2段露出ブラケッティングがこのカメラでもできる。

・握った左手は小指があまらないグリップ形状をしている。

・前ダイヤルと後ろダイヤルの使い方はほぼペンタックスと同じ。且つ、後ろダイヤルが右によっているので牛乳瓶の底のようなメガネをかけた左目使いであっても、操作でメガネが邪魔になることがない。

ことがわかりました。

今までのペンタックスとほぼ同じ操作で、更に使いやすそうでした。

ただ、シャッター音のバフンという響きと、頭頂部のストロボまわりがニワトリのトサカに見えるのが残念。グリップの赤いラインもジウジアーロがデザインしたわけでもないし...

最終的には撮像面マークが異様に後ろにある、というまあ今となってはどうでもいいことが決め手になって、一旦その場をひきとりペンタックスカメラ達とおさらばした後の札を握りしめてご購入いたしました。

あ、買った時ですが、50mmF1.8のレンズとのセットでした。昔、ニコンFGやnewFM2を使っていたのでニコンのFマウントのレンズは総計8つくらいは買いましたが、全て手放していました。まずはこの昭和40年代の一眼レフセットのような組み合わせだけでペンタックスファミリ軍団とおさらばしましたが、交換トレード時にいくばくかの残り金ができたのでタムロンの28-300mmズームを後で買っています。

ペンタックス K-1の存在

運命的な出会いの裏には、なんらかのほろ苦い思いが隠れているものです。

それがペンタックス K-1を「次に買うからね~、FAリミテッド31mmが待ってるよ~。」と心に抱いていた時期がありながら”振って”しまったことでした。このカメラがディザー広告で次々に出るたびに楽しみにし、発表会にも行きました。触りました。握りました。ズシッとした凝縮感、手に伝わるシャッターの感触。しかし。

軍艦部に一つダイヤルが増えたことが、急激に醒める原因になってしまった。最初は、このダイヤルがあることで設定を更にメカメカにできることに寄与していそう、左目で覗く身にとっては後ろにあるコマンドダイヤルがメガネと干渉する問題も、このダイヤルに機能を割り当てれば実用度200%とかそんな事も夢想していました。でも、このダイヤルがあることで全体のシルエットがとてもダサく思えてしまう、という気持ちが先にたってしまった。ダイヤルそのもののデザインも後からとってつけた様、これが、上面の左側のモード選択ダイヤルが印字が刻印になっていたりしてやたら高級感があるだけに余計際立ってしまう。このダイヤルが無く、そのスペースに上面液晶を面積広く割いていたら間違いなく一家とおさらばなんてことには成ってなかったことでしょう。

それと、ペンタックスではサードパーティの新レンズが期待できないというのも一家を揃え始めるうちに不安としてあったのも事実です。それも、まあ、FA31mmとか孤高のカメラっぽくで良かたいね、とかいってた時期もあったが、K-1用に合わせて出た標準ズームレンズが○ムロン(体温計メーカでない方)製のOEMであり、そのレンズはニコンやキャノンマウント用であればずっと安く手に入ることを知ってしまってからは、いや、孤高どころかソレってやっちゃいけないって高校の倫理の先生が仰ってた正にそれでは。。。。とメーカ姿勢への思いが揺らいでしまったのもあります。

さて。他メーカのことも。

キャノンは同じサイズの一眼レフとしてEOS6Dがあり、ソニーはミラーレスとはいえ人気高いα7がある。そっちはどうなのよ、というと最初から興味はありませんでした。どちらもシャッターのフィーリングがどうしてもなじめませんでした。

◆画質:ペンタックスとは違う、これがニコン

撮影はRAWで撮り、後で自分の好みにチョコチョコいじります。面倒ではありますが、フィルムをスキャナで読み込んでデジタル化していた頃に比べたらハトのフンみたいなものだし、結構この過程が面白い。なので、画質の評価は元の素材としてどうか という見方になります。ネガフィルムのコダックのロイヤルゴールド100が好きだったので、そのイメージでシャドウは落としハイライトの階調は出し、色味は少しビビッドに、という傾向です。

最初に思ったのは、ペンタックスのK-3はAPS-Cだったけどハイライトのレンジは広かったんだな、と変に前のカメラのことで感心しました。次に目についたのはD750はローパスフィルタがあるのに結構シャープであること、そして、一方ローパスフィルタがあるためなのかそのピントから外れたところのざらつきが無くて(いや、K-20Dもザラつきがあったからそれが原因でないなあ)好感が持てるということです。このアンフォーカス部分のイメージがペンタックスとは画像の印象を大きく分けるとこで、ライトルームで操作するにしても一手間いらずで楽です。画の印象としてはザラ感というかツブ感のあるペンタックスの方が実物が実際の距離より前に出てくるような力強さがありました。ただ、撮る方が年を重ねたせいか、これくらいのシットリ感をちょうど良いと思えるようになりました。D750はシャドウの表現が丁寧に感じます。

もう一つ、あれっと思ったのは赤色の出方です。薄い、淡白です。ペンタックスは、それはもう飽和お構いなしに赤系統は彩度モリモリでしたが、ニコンD750は違った。それも、彩度が薄いだけならまあまあそんな事は小せえ、ですが赤色の濃さも控えめなんです。ここはかならず後でいじるようになりました。D750の画自体が決して地味なわけでなく色全体ではペンタックスほどではないにしろ割とパキパキですが、こと赤に限ると色の出し方の違いがよくわかりました。それと、もう一つ色についていえばホワイトバランス。ペンタックスの場合は、バランスを撮影前にいじる時の自由度が高いのに比べD750は青←→黄色の1軸しかない、これも違和感です。色のそのままの出方はペンタックスの方が魅力的だと感じました。

あと、カメラの裏面の液晶の色がニコンニコン1でもコンパクトカメラでも黄色によった色彩をしていますが、D750もその方向に感じました。ここも、ペンタックスは液晶の色合い補正ができますが、どうもそれが無い。見つけられてないだけかもしれませんが。

高感度の特性でいえば、ペンタックスのD-70になるとAPS-Cでも同じフォーマットのK-3より随分綺麗になっていたのを経験していたので、D750がフルサイズゆえのメリットでここを大きく引き離しているとは感じていません。

◆良いところ

D750は良くできている、と感心します。項目ごとに気づいた点をあげると

オートフォーカス。合焦までの速度が早いというわけではないが、合った時の精度が高いです。とても高い。驚くほど高い。ペンタックスはここが17-85mmズームでは改善したとはいえ、D750に比べたら僅かな前後ズレが多いため、家の中で暇な時には10回撮って何枚当たるかをみてその日の運勢をみる、なんてことしていました。撮る対象が食卓の上に置いた蜂蜜のプラ容器だったりするので何枚撮っても後に使えるものではなく単なる占いみたいなもんです。D750でこれをやったら毎日が強運野郎、そんなことになりかねません。それも、ニコンのレンズでなく、タムロンで。

・3Dトラッキング。これに似た機能はペンタックスにもありました。一度ピントをあわせた被写体部位を、他の測距点で補足して捕まえつづけるという機能。しかし、D750のそれは本当に良く合い続けます。一度見失ってもまた合わせにいくようなこともしてるのではないか、と思うくらいです。このおかげで、もっとも精度の高いと言われる中央1点の測距点で合わせたあとは構図を自由に振ることができます。この3Dトラッキングを知らないころは、親指フォーカスというか、一旦フォーカスを固定させたあとカメラ構図を振るということを自然な作法としてましたが、この機能を知ってからはデフォルトの人差し指フォーカスで中央合わせたまま構図が決まったら「今だ、それ!」といとも簡単に撮影できるようになりました。そして、花なりカマキリなりカメムシなりをマクロ的に撮る時にも効果的です。なぜなら、体幹が日に日に弱くなってきたせいか、カメラを構えていると前後に体がプルプルしてしまうのですが(別にカメラを構えてなくてもプルプルしているかもしれませんが)、この3Dの意味は前後にブレてもフォーカスを合わせてくれるということでプルプルピンぼけが無くなりました。そして面白いのは、この3Dトラッキングを含めたオートフォーカスモードの切り替えが、左手の親指でしかるべき専用ボタンを押しつつ、EVFではない光学ファインダーを覗いたままで、もう一方の手の右手で前ダイヤルと後ダイヤルをグリグリして変更できること、さらには設定を3Dトラッキングにすると、なんとフォーカスポイントで”3 D"と表示されること、この発想には驚きます。

・ボタン配置が左目覗きには適切。メガネを使う立場でも干渉しないことだけでなく、わかりやすいところに其々があります。特に、ファンクションボタンという機能を割り振れるボタンが普段は目に触れない前面のレンズ装着部脇にあるのは良い。というのは、この手のボタンが目につくところにあると、「はて、ここに何を割り振ってたっけ?」というのが気になり撮影を忘れてカメラのメニュー階層を探るなんてことをパナソニックのLX100でしてたりしていますから。

・クロップできる。撮像範囲を36☓24フォーマットだけでなくAPS-Cに狭くした場合も撮影できます。さらには、その中間の30☓20と言ったらいいのか、中途半端なワクでも撮影できます。この中間のワクで撮ると、画素数も1600万画素くらいを確保しつつ、同じレンズでも画角とパースが新鮮な不思議な気分を味わえるので結構好きです。タムロンの45mmの単焦点を使ってこの中間ワクで撮影すると、パースは50mmよりついているのに画面構成は50mmより切り取られた何とも夢を見ているような世界が1600万という細密な情報をもって再現され面白いです。(残念ながら、ミラーレスのZシリーズではこの中間ワクはなくなっているようです。)。実用的な意味でも、この中間ワクだと見た目の測距点の範囲が相対的に広がり、3Dトラッキングの素晴らしさをより実感することができます。

・ストロボ。ニコンの制御の素晴らしさはFGを使っていた頃から感じてました、ペンタックスではこうはいきません。そのストロボが最初からISO400ならばガイドナンバー24という使える光量を持ちつつ最初から頭についているのです。トサカがピョコッと上がるので見た目は更にニワトリに似てしまうのがちょっとアレですが、これは先にあげたクロップと組み合わせるとかなり実用的なシーンが出てきます。というのは、ストロボの照射が画面済まで届かないことが広角でなくてもあったとしても、最初からクロップしてしまえば気になりません。外付けの小さなスピードライト(ニコン語:日本語に訳すとストロボ)SB-500も便利です。ISO400ならガイドナンバー48であり、単3電池2個だけで稼働するうえバウンスもできるは、FP発光という高速度照射もできるは、無線も受ける、果てにはLED点灯もできると良くできています。ストロボが安心して使えるのはニコンならではの利点だと思います。

・グリップが深い。しっかり握れるというだけでなく、小指までしっかりとグリップに収まる。これは使っていてカメラの安定感につながります。

◆悪いところ

あくまで主観ですが、持ち物としての満足感や使い方で気になったところもあります。

・シャッター速度上限が1/4000秒まで。おい。それ以上の速度使ったことあるのかよ。と言われればありますと答えます。K-3を使っていた時は、f値が1.9とか2.0とかのレンズを晴天で使って絞りを開放付近まで開けると、案外と1/6400秒になることが多かったです。なので、D750でF1.8のレンズを使うと不便を感じます。では、どうするかというとNDフィルター、それも光量を一気に1/16とか1/32まで落とすものを持参します。ここまで一挙に落とすと、あわよくば1/250秒くらいになり、トサカについているストロボでボケていながら日中シンクロというワザを使うことが出来るからです。もちろん、ストロボの光量もそんだけ落ちてしまうので、ごく近くの葉っぱにピカッというくらいですが(そこまでしてニコンのストロボを使っているファンがいることをわかって欲しい。SB-15、あれは名品だった。終わり)。

・手ブレ補正のないレンズは結構ブレる。1/60秒くらいでもブレが出るときあるし、1/30秒で標準レンズだとかなり気にしててもブレが出ます。このあたりが、バフンというシャッター音が示すように、シャッターのブレーキ機構とかにあまりお金を使ってないのかなと思わせるところです。対策としては、手ブレ補正のあるレンズしか使わない。これでしのいでます。

・デザイン。全体の形は許せるとしても、やはり頭のトサカ。この部分を上からみると、昭和の香りよろしくガニ股のオヤジさんが履き古したステテコにしか見えません。更に、ストロボを上げてごらんなさいと言うので上げるとよりステテコ感が増す。というか、ステテコが起立している。撮影者側から見た場合。しかし、ここはどうにも直しようがないのでそんままにしています。APS-C機のD7500ではココがうまく造形してありステテコ感が回避されていて羨ましい。

・防水性能はペンタックスK-3より劣る。内部のシール部分に施してある処理を見るとK-3みたいに水中につけて3分、なんて真似は到底できません。というより、これはK-3がすごすぎる。一体どういう用途を目指してあれだけシール密閉したのかその理由がわからないほどです。

◆D780への誘い

これを書いている時点で、D750の発売からすでに7年が過ぎているので後継機ともいうべきD780についても触れておくと、一時あのシャッターフィーリングが気に入り買い換えようと思った時期がありました。向こうさんには1/8000秒があるし、トサカは無いし。しかし、そうは言っても買い替えに至ってないのもこれまたデザイン。D780は、上にビヨーンと間延びしている形に見えて、昔の持ちカメラでいうとキャノンのFTbに少しシルエットが似ている。D750はそこが低く見える造形をしているので、タイプ的にはニコンFG的雰囲気も少しある。まあ、D780も魅力だけど、そろそろミラーレスのZ7もいいかなと思っているところがあり買い替えにはいたってません。Z7どころかZ7Ⅱがもう発売されているご時世ではありますが、Z7の方が好きです。これも性懲りもなくシャッターフィーリングの違い、どちらが好きかという結局ソコですね。といいつつ、バフンのD750を使っているからあまり説得力ありませんが。

◆総合的にみると

43年のカメラ歴の中でもっとも近い立ち位置を探すとEOS100です。何でも撮れる、そして撮った結果が期待以上のモノになっている事が多い。操作感にスキがない。だから、このカメラも長く手放さずにおくことになりそうです。

そして。

ニコンFG。あの写真機。最初に自分が買った一眼レフとして愛着を持った時の記憶を、今では斜めに傾いてしまったNIKONロゴを見ながら少し思い出したりしています。

◆次回

次もニコンです。Zマウントです。APS-Cマウント。そう、あのカメラについて書こうと思います。