まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その41.K-70 スーパーサブ

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◆出会い

ここしばらくはファインダ付のコンパクトカメラに興味が向いてましたが、実際に撮影する時には半分以上の割合で一眼レフのK-3を持ち出していました。

画質で語れば今のコンパクトカメラLX100で全く問題はありません。十分です。だのにナゼ重くかさばる一眼レフを使うかというと、ファインダを覗くのが楽しいからです。覗いた瞬間に、目の前の立体が3次元でも2次元でもない特殊な次元として黒い枠の中に立ち現れる。カメラを振って構図が少し変わっただけで、その特殊な次元がパコッと飛び出す瞬間がある。それが楽しい。これが電子ファインダだと、この3次元と2次元の間にある次元を感じとれるとこまで未だ己の目を鍛錬できておらず。どうしてもK-3を手にとってしまうわけです。

ただ、このK-3には高感度でのノイズが多いという欠点があります。ペンタックスには性能は良くても開放f値が暗いズームレンズがあるので、感度を上げて写したいシチュエーションに出くわす機会が結構ありますが、このノイズを恐れるあまり明るい単焦点レンズに交換します。すると、後になって気づく。はて?何のためにズームつけていたのだきゃ? と。

そんなとき、高感度性能の大幅な向上を謳ったペンタックスKPが発売されました。カタログの能書きだけ読むと技術的に相当良いらしい。そこで、量販店で実際に触れて確認してみました。結果、持ち帰ったのはKPではなくその横にあったK-70となりました。

KP。触れてみるとボディの上に乗っかっているファンクションダイヤルにどうしても違和感がありました。これはK-1を目にしたときにも感じたことではありますが。K-3の操作系で十分なのにもう一つダイヤルが有る理由がやっぱりわからない。そのダイヤルがある場所に小さな情報液晶がついていた方がよっぽど有り難いのに。

と、もう一方のK-70は昔ながらの操作感でありつつ、店内をバシャッした感じでは高感度も向上している。そして、お値段はKPの半値。結局、そこか、¥か。 というと、まあそうです。

◆より万人向けに

使っているうちに、K-70は誰もがストレスなくキレイに残すという意味でK-3を超えてしまった部分が多々あることに気づかされました。ツラツラと挙げてみると、

①高感度性能:K-3と比較してこれは明らかに進歩しています。ISO1600で、ひょっとしたらK-3の400並に届いてしまっているかのような描写を見せます。ノイズが無く、色彩が豊かで、偏りや濁りがない。この性能ならば、望遠側の開放f値が5.6のズームでも感度を上げて問題ないのでレンズ交換せず一本通しのまま使えます。

②手ブレ補正:補正効果が上がっていることが実感できるだけでなく、どの局面でも働いている安心感がある。手にくるショックはバチコンッと結構大きいのでブレ易いのかと思うがそんなことなく良く効いてます。

③オートホワイトバランス:人それぞれのところではありますが、このK-70はK-3よりも見た目に近いホワイトバランスが得られます。その一方、マニュアルで色温度を合わせたりグレーペーパーで設定したりする場合はK-3の方が現物に近い色が出ますが、調整することを考えずにオートのホワイトバランスのままならK-70は随分使いやすくなってます。

④味付け:K-3が柔らかさを持つ描写だとしたら、このK-70はK-01に似た傾向のパリッとした味付けです。なので、コントラストが明暗にしても色彩もしても足りない時には実際よりも見栄え良く写ったりします。これに、明瞭度補正という操作を+2のレベルでかけるとよりパリパリ感が際立ちます。

不自然な描写になりそうですが、むしろ逆に、合わせるレンズによっては好ましい仕上がりになります。例えばタムロンの17-50mmf2.8ズームをつけると、レンズの良好なボケ感とカメラのパリ感がうまく調和しK-3につけた時に感じていた像の弱さが消えて実在感ある絵が出てきます。誰でも好きになる描写の方向だと思います。

このように、高感度性能だけでなく全方位的に進化している、しかも、ゆがみのないファインダーはK-3と全く同じでありながらお値段は安い。

K-3より好ましく思うところをもう一つ。それは、ボディを取り巻くゴムの革シボ成型です。K-70は艶消し気味で見た目に上品なだけでなく握ったときの滑りにくさも改善しています。

◆2台持つということ

さらにK-70で機能的に増えた要素として、バリアングル液晶やリアレゾ撮影が挙げられます。バリアングルは三脚に固定した撮影をするときに便利ですが、どちらかというとチルト式の方が、顔を下に向けて撮影する2眼レフスタイルをスナップ写真を撮るときに使えるので良かった気もします。バリアングルでこれをやろうとすると、液晶が横に開いているのでハタメには隠し撮りしてるのがバレバレになってしまう。とはいうものの世の趨勢がグリグリと液晶が動かせる方が良いというのならその恩恵をありがたく享受できた方が正しい在り方だと思います。

ここまで性能が良いと、K-3の出番がなくなるかというと今でも普段持ち出すのはK-3の方が多いです。その理由は、フィルムの頃から身についてしまっている撮影のリズムに合うからです。

まわりを見て、良し写すぞと思って、次にすることがカメラの上面を無意識に見ること。昔からこうして、絞りやシャッター速度や露出補正を確認してきたので、ファインダを覗くときには黒枠の中にスッと入っていけます。

ところが、K-70だけではありませんが上面に情報液晶が無い場合、覗き込む前に設定状態を確認するには背面液晶を見ることになります。その瞬間、ほんの少しですがファインダを覗く儀式の前に余計なことをしている迷いが生じ、黒枠をみたときの集中力が抜けてしまうワケです。一眼レフの醍醐味はファインダに有り、などとほざいておきながら、ややガス抜けして申し訳ございません状態になってしまう。アウアウ。

また、K-3はSDカードがダブルスロットであったり液晶が3.2インチと大きかったり写真を撮ったあとでも整理し易いマシンであることも重宝する点です。バリアングル液晶だと、3.2インチでなく3インチ液晶になりますが、この0.2インチの差は見比べてみるとサイズ以上に大きく、rawファイルをチマチマと電車の中で現像したりするとき老眼の疲れ方が違ってきます。

また、ボディがマグネシウムなので、例えばアメリカのロサンゼルスで暴漢にマグナムで撃たれたとしてもその衝撃を受け止めてくれるかもしれません。そんな事ばかり考えて生きてきたわけではないが。

◆すすめるならば

これから一眼レフを始める人がいて、奇特にもニコンやキャノンではなくペンタックスを選ぶ方がいたら、その人のタイプによってK-70をすすめるかはたまたK-3にするかが変わってくるでしょう。

快活な人気者の青年には間違いなくK-70をすすめます。キレイな写真をバシバシ撮ってあげて町一番のナウなヤングでいて欲しい。そうではなく、影のあるやや危険な野郎にはK-3を与えます。アレコレいじる、それも一人ぼっちでいじるというには格好なカメラであるし、高感度性能の低さからブレ・アレ・ボケを連発しても「余はダイドーしておるのである。」の一言で通じるし、アメリカのロスで暴漢にマグナムで撃たれ(あれ、これどっかで話した気が)。。。 なによりも、何をしでかすかわからない野郎には使いこなしの難しいオモチャを与えて、村の治安を乱す方向に走らぬようにするのが一番と庄屋どんも昨日の集会で言うておった。

さて。

今はSONYのフルサイズ一眼が人気であることからもわかるように、カメラの上面を見て状態を確認してからファインダを覗くことに拘る人は少数でしかないでしょう。それでも、そのクセが抜けないのは、自分の中にフィルムカメラの延長としてシームレスに現在のデジタルカメラを捉えておきたいという気持ちの表れなのかもしれません。

全く性格の違う2台として、それぞれの良さを楽しみつつこれからもつきあっていきます。

◆カメラスケッチ、これでひとまず終わりです

3年ほど前にkodakのインスタマチックから初めて41台、このK-70が今のところ最後のカメラになります。このあと、またカメラを買い替えれば続編がつづきますが、「欲しい熱」はある日とつぜんに訪れるので定かではありません。

この3年の間のカメラの変化はなんといってもスマホの台頭でしょう。カメラという撮影に特化した電子機器は売れ行きが落ちていき、製造メーカの足元もぐらついている話をときたま耳にするようになりました。

この先はどうなっているでしょう。人類はもうスマホさえ持ち出さずに撮影しているかもしれません。町中にある監視カメラ、あれがサービスという名のもとに本人に気づかれずに記念写真を無数にとっておいてくれる。人々は、それをネットで確認しダウンロードすれば良い。荷物は減るし、アレコレ撮影に気をまわさずに済むしチョー便利そうです。

しかーし。写真でしか表せない世界。それを自分がコントロールする楽しみ。これを一度味わったら、世の流れがどうであれ 先人が発明し改良してきてくれたこの小さな道具カメラをずっと味わいたい。結構、そういう方がアチコチにおられるはずです。

次からは、実際に撮影したときのアレコレをヘボ写真をひっぱりだしながら細々と書いていきたいと思います。