まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

コンパクトカメラのお話(1) スマホ時代の今

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NIKON A1000

◆今=スマホ時代 → デジタル時代 → フイルム時代=昔

以前に標準ズームを使ってきた体験をこのブログに書いた時には、時系列そのままに昔から今にいたるまですんなりと記憶をたどることができた。

ところが、

ここで「よし、コンパクトカメラについても振り返ろう」と思ってパソコンを前にしてもなかなか書き出せずにいる。

なぜだろうか。 恐らく、それは

標準ズームが進化の過程を辿れば良かったのに対しコンパクトカメラは、フイルムの頃・QV-10に始まるデジカメの頃・スマホ写真が当たり前の今 と大きく3つの時代の境目でその役割が様変わりしてしまい直線でつなげることができないからだと思う。

フイルムの頃は普通の人が写真を撮る道具といえばコンパクトカメラの事を指していて一眼レフは特殊な機材であった。。。みたいなところから強引に始めると、もはやそれがスマホに置き換わってしまった今では「そして用無しになってしまいました」という衰退の線しか出てこない。

しかし、実際には置き換わったように見えるだけでそうではない。

何がそうではないのか。

コンパクトカメラ価値再考への思いを込めて、ここでは逆に今を取り巻く状況を見つめてから過去について思い出していくことにする。

  ところで、上の写真。

A1000というニコンのカメラでズーム域200mmくらいで撮影したケシの花です。見た時の印象そのままに写っていて鼻唄が出ました。

ヒンナゲシーのは〜な〜🎶

 

◆そもそも コンパクトカメラと言うときのイメージ?

コンパクトカメラの コンパクト というのは何なのか。

大きさがコンパクトであること。と当たり前に繰り返せば、

では、何センチ以下、何グラム以下? みたいな事をとっちゃん坊やに聞かれた時に困る。

私は、ポケッタブル(自分のポケットに入るかも)というイメージでとらえている。

 

そして、大きさと並んで形態的な特徴として

レンズ一体であることが前提の写真を撮る道具

 

という見方もしている。

レンズ交換式のカメラだったら、いくらベルボトムの年代物ジーパン(メルカリ売却価格1300円)を人目も気にせず愛用していようが尻ポケットには入らないし。

 

本当は更に加えて

レンズ一体でポケッタブルでどこにでも携行できる、

そりゃ何のためかといえば

確実に誰にでも写せること、そこに至る操作がカンタンであること

 

と言いたいけど、そうではない高級コンパクトカメラ(✳︎)というものがあるのでややこしい。

 

✳︎すんごく値段が高くて、ミラーレス一眼+ズームレンズが買えてしまう。

 

◆撮る道具。 スマホ>コンパクトカメラ

なぜ今こんなにもコンパクトカメラの種類が少なくなって数も出ていないかというと、そりゃあ写真を撮るということであればスマホで出来てしまうから。

撮れました、だけでなく とても良く撮れました を高性能CPUで実現している。

ピンボケしない、手ブレしない、真っ暗や真っ白にならない、近くが撮れる。

ここの 撮れました の部分だけでもコンパクトカメラの中には苦しい物があったりするけど、

スマホはそれが難なく出来るだけでなく

シャープ、ノイズが浮かない、色が混じらない、歪曲がない、周辺光量がガタ落ちしない。

といったキレイな写真が当たり前に撮れる。 

 

そして、単に撮れるだけでなく写真の活用範囲を広げたのもスマホである。

そういった今どきのスマホ(asカメラ)の特長を思いつくままにタラタラ書くと、

 1。撮る時にスマホ1コで済ませられる。

余計にものを持つ必要がない。出費もいらない。スマホ以外の操作を覚えなくてよい。

 2。残す写真だけでなく、伝える写真として機能する。

伝えるには通信機器に写真を転送する必要があるが、そもそも通信機器の上に乗っかっているのでそんな事を意識すらしなくて済む。

 3。画質がきれい、その1。=センサ&レンズ。

広角寄りでセンサーが小さいためピント合う遠近範囲が広く、見せたいものが確実に写る。

昔のフイルムコンパクトカメラで「固定焦点F8の35mmなので近くから無限遠までジャスピン!」とかいいながらボケボケだったのとは大違いで本当にピントが合う。

ピントを合わせる被写体認識性能も高い。

さらに、これだけ小さいレンズだと歪みとか当然あるだろうがCPUで瞬時に補正。

 4。画質がきれい、その2。=高性能CPU。

階調のコントロールが優秀なため意外と明暗の幅が広い。

シャッターは一押しだが、実際は露出を変えて複数を高速連写しHDR合成しているという話を聞いたことがある。それが出来るCPUを有しているというのもあるが、デジカメの弱点が白飛びにあることを知っていてソコに注目し対処し好結果につなげている。

また、片手撮りを前提に制御しているので光学式含めて手ブレ補正制御が練れている。

 5。画面ディスプレイ表示が高性能できれい。

きれいなのでまた次の写真を撮ろうという気にさせる。

その後の画像修正も目が疲れる事なく簡単にできる。

 6。撮影後の修正が楽。

撮ったらそれで終わりでなく、撮ったあとで修正することが前提になっている。撮る前に撮影要素を設定するのでなく、後で修正するという考え方のためシームレスに編集修正に移れる。

 7。とはいえ、凝った撮影もアプリ次第で出来る。

アイフォンの標準カメラアプリだと撮影時にホワイトバランスやシャッター速度、ISO感度をマニュアルで設定することはできないが、ライトルームアプリの撮影機能を使えばアイフォンでも撮影時にこれらを設定できる。

 

スマホ撮影の弱点について

では、あらゆる面でコンパクトカメラに勝つかというと、スマホゆえの弱点がある。

スマホでしか写真を撮ったことがなければこれは気にならないが、逆にスマホでない写真機とのつきあいが長い身にとってはアレレ?と感じた部分を以下に列記する。

 

 1。画像ファイルでスマホクラウドの容量がみるみる減る。

コンパクトカメラでも、数多くとっていたら記憶媒体であるSDカードの容量は減る。

しかし、その影響はカメラの範囲に留まり一杯になったらカードを入れ替えれば良い。

ところが、スマホの場合は「画像ファイルが、他の空き容量を圧迫する」という写真以外のところに影響するというところが違う。写真をとるか音楽をとるか、とかクラウドの容量をサブスク費用を割いて増やす とか 本来の写真では考えなくてもいいことを考えさせられていることになる。

これはあまり楽しくはない。

 2。「標準画角」の位置付けがズレている。

普通に構えて撮った時の画角が26mmである。小さいレンズの作りやすさとか動画撮影するときの使いやすさとか事情があるのだろうが写真でいうところの広角28mmよりもさらに広い。

すなわち肉眼に比べて遠近感がかなり強い。

50mmの画角に慣れた身だからそう思うのかもしれないが、フイルムの頃はコンパクトカメラのレンズは大体35〜40mmだったことと比べてもいささかズレすぎな気がする。

まあ、スマホの画角を望遠側に2倍ズームしてもそれほど解像度が落ちる感じではないのでイヤならそうすればいいのだが、デフォルトが28mmの更にアッチというのがなかなか慣れない。

 3。ファインダーを覗く撮影ができない。

そりゃ、無いのだから当たり前である。しかし、これは撮影スタイルとして時として無礼を演出してしまう。あの、腕を伸ばして画面を見ながら撮るという方法。

人を撮るときに、撮影者は人の方ではなく自分の手元を見て撮影する。

無礼じゃないかなあ。と思うのは昭和フタケタ世代ゆえか?

なお、

「ファインダーであれば日中明るくても見ている像に太陽光が当たらないので見やすくて良い!だからスマホでなくカメラを持とう!」という意見があるが、

画面ディスプレイを見て日中に撮る場合であっても、画面の明るさを自動的に最大明るさにしてくれる機能がこれまたライトルームアプリの撮影機能に備わっている。そういったモノを使えば、あえてカメラを買うほどのことでは無い気がする。

 4。望遠性能が心許ない。

スマホであっても、撮影するときに画面を広げれば5倍程度になるので昔の望遠レンズ135mmくらいまでは写真に撮れないことはない。

しかし、レンズで光学的に望遠しているのでなく、元々画素数が限られている中で更に狭い範囲を拡大して見せている仕組みなので撮れた写真は画素の粗を見ることになる。

私の印象では3倍望遠を超えたあたりから見映えがあやしい、と感じ始める。

 5。シャープネスがきつい。

良くとれてキレイというのは的確に情報を読みとれるという意味ではそうだが、自然であるかという尺度が入るとスマホの場合は崩れてしまう。なぜなら、広角レンズで且つ撮像素子が小さい為もともと被写界深度が深いのに、画像処理でのシャープネスが掛かりすぎていてすべてが色鉛筆で縁取りされたように思う時があるからである。

この過度のシャープネスはユーザが臨んだ結果なのか、それともHDRを破綻なく合成させた時の副産物なのかはわからないが人工感アリアリに感じる。

スマホの中のアプリにも、撮影時にシャープネスを調整できるものがCAMERA+などあるらしいが、使おうとするとそれなりのサブスク料がかかるので二の足を踏む。

 

以上5つの中で、2と3は個人的な言いがかりみたいなものであり1の容量圧迫の問題もそれはそれで通信しやすい利点もあるのでスマホカメラの宿命と思えば気にならないかもしれない。

だが、4の望遠性能は小さな撮像素子の画素数が飛躍的に増えたとしてもレンズ上の制約から弱点として残るであろうし、5のシャープネス過多はスマホの写真のキレイさとはそういうものだという見方がほぼ確立している現状からして変わることはないかもしれない。

 

そうなると

①「望遠撮影に強い」

②「シャープネスが過度でない、あるいは撮影時に調整できる」

①②ともレンズ交換式カメラなら当たり前のことだが、大きく重いボディと長いレンズではなくてポケットに入りそうな大きさで補完してくれるなら、そこにコンパクトカメラの存在価値が出てくると思う。

 

◆コンパクトカメラ>スマホ ①望遠撮影

グイーンとズームできればそれだけで済む。わけではない。

レンズの望遠が効くということと、それで撮影した写真が期待どおりかということを結びつけるには、

ピントの合焦精度、手ブレ補正の効き具合、開放f値によるシャッター速度、レンズやデフォルト画質の傾向、といったことを含めてとらえねばならない。

その中でも、合焦精度は小さな撮像素子で検出しているので恐らくそう問題ではないだろう。

問題は、開放f値がどうしても暗めになることとかボディ自体が軽くて保持が安定しないことからくる ”手振れ” である。

”手振れ”をいかに抑えるかがカギになる。

手段その1は

ファインダーがあること。カメラ保持安定のために。

メガネ越しに覗く私であっても、背面液晶を見ながらよりもファインダーを見ながらの方が確実に手ブレは減る。レンズ交換式カメラのように表示性能が優秀なものではなくても、カメラ保持の安定化のためにファインダーは必要と感じる。

手段その2は手ブレ補正。

カタログにはその補正効果を3段とか5段とか書いてあることがあるが、これはあまりあてにならない。同じ段数でもカメラ製品というかカメラメーカーによって効き方に大きな差があることを実感している。そういった生の情報をWEB口コミで探したうえで、自身が人身御供として使ってみないとわからない部分がある。

なんとなくの経験では、撮像素子が小さい割にガタイが大きいほど効く。

撮像素子が大きい割にガタイが小さいほど効かない。ような気がするが全てに当てはまるわけではなかった。

 

◆コンパクトカメラ>スマホ ②シャープネスの度合い

シャープネスを瞬時にかけるにはそれなりのCPUパワーが必要とされるだろうから、逆説的な言い方をすればスマホに対しパワーが少ないコンパクトカメラであればそれほどかからない? かどうかはわからないが、

これまで使ってきたデジタルのコンパクトカメラではスマホほどのシャープネスをデフォルト画像で感じたものはない。

乏しい経験をベースに独断するのは危険だが、スマホの人工的解像感ギンギンに辟易してきたらコンパクトカメラを持つというのは良いと思う。全てがクリアでないが自然、という見た時のイメージに出会える可能性がある。

また、コンパクトカメラの範疇に入りながら撮影時にシャープネスを変更できる機種を検討するのも一考である。その分、値段が全然コンパクトでなかったりするが。

 

◆コンパクトカメラとスマホの共同 = 転送アプリ

以上は、スマホの弱点の裏側としてのコンパクトカメラの残された可能性をみてきたが、今どきの写真野郎としてはスマホによって実現された写真の新しい使い方すなわち送信共有について「いや、それできないよ」では困る。

コンパクトカメラで撮影したとしても、それがすぐ通信可能なことが要求される。

そのために、ここでスマホとの共同作業が発生する。

スマホこそが現在の通信の基地であるためである。

 

カメラからスマホへと、いかに簡単に確実に画像を転送できるかが大事であり、どのカメラメーカーもそのためのアプリを提供しているのでここは問題ない。

だが詳細にみると、WIFIを使わずにbluetoothでも送れるもの、送る画像を選択しなくても自動的に送るもの など各カメラメーカー毎に使い勝手に差があるので使うカメラのメーカーを選択するときにはカメラからスマホに転送するアプリのことも知っといたほうが良いと思う。

 

◆コンパクトカメラの操作性

補足としてスマホとカメラの違いをもう一つ挙げるとすると、それは操作性である。

別の言い方すれば、操作するときに何に触れるか。

 

スマホは、物理キーなりスイッチがほとんどなく操作は画面ディスプレイのタッチが主であることが一つの特徴である。

一方、コンパクトカメラにはシャッターボタンはもちろんのこと、各種設定のためのダイヤルやレンズのズームスイッチなど手で押したり回したりする物理スイッチが多い。それをもってコンパクトカメラの扱いやすさに結びつける向きもあるが、所詮はコンパクトカメラの小ささからして簡単な操作で済ませられることに越したことはない。

そういう意味で、操作性や操作感うんぬんのプライオリティをあげるならば最初からコンパクトカメラを使わずにレンズ交換式カメラを使えば良いと思う。押したり回したりの操作のし易さとか楽しさとかは小さなボディでは最初は面白いがやがて窮屈すぎて億劫になる。

シャッターさえ押せばどんな時でも写る、これが小さなカメラに期待することでありそこの母数が多いからこそスマホのカメラ機能がここまで盛んになってきたことを思えば、簡単な操作だけで自然な写りと望遠撮影ができればコンパクトカメラの意義は十分ある。

 

しかし、望遠はできるしファインダーもあるというコンパクトカメラになると、そこそこに操作ボタンや機能も欲張ってついている。いかに簡便にとれるかを目指そうとすると、こちらの知識や経験が要るという何だかわけわからないことになってしまう。

 

◆私の今どきベスト = ニコンA1000

ここまで、今どきのコンパクトカメラの生きる価値として、望遠性能が高いこと、シャープネスが自然あるいは調整ができること といったスマホにない利点を持ち、同時に転送ソフトや操作し易さなどスマホ同等の簡便性を備えていることを挙げてきた。

 

グイーンと望遠ができてファインダーがまがりなりにも付いているという形態をコンパクトカメラとして探すと、ソニーパナソニックニコン・キャノンあたりから数機種がしぼり込まれるが、そのうちに私が使ったことのある2機種について感想を述べて最後にする。

 

一つはソニーのRX100M6。

これは望遠が200mmまで効き、撮影時にシャープネスの調整ができる。コンパクトカメラとしては大きな1インチの撮像素子を備える。見た目もカッコインテグラ

カメラの記事媒体では結構ベタ褒めされている機種である。いわく、ミラーレス並の写真がこの大きさで撮れるとか。

 

使ってみた印象では

・手ブレ補正が弱く、せっかくの望遠200mmが活かしづらい。通常の標準域でも暗い環境で撮影すると手ブレを起こしやすい。

・素子は1インチではあるが、画質はその上の4/3インチよりも1/2.3インチ素子に近い。これはむしろ1/2.3インチの方の性能を褒めるべきかもしれない。

・ファインダーや背面液晶は見やすい。

スマホとの連携の手順がわかりづらい。

といったところ。

手ブレ補正の弱さにその他に良いところがあっても全て引っ張られている。ひょっとしたら私の個体の問題かも知れないが、それ以外にも1インチが特にすぐれた画質を提供するわけでもないとわかったので使用頻度は低い。また、カメラとしてみたときの設定メニューの階層がわかりづらい。

 

もう一つ、望遠側のレンズを持ちデフォルトのシャープネスが適度なカメラとしてニコンのA1000を持っている。

このカメラを使ってみての印象は、

・手ブレ補正が良く効くので望遠域(~840mm)がそこそこ使える。

・レンズの描写が自然である。

スマホ連携ソフトが使いやすい。というか余計な事を考えずにできる。

・ファインダーや背面液晶の質は辛口で言うと「付いている」程度。しかし、SDカードをパソコンにいれて画像をみると1/2.3インチ素子ながらその描写に驚く。(ちなみにアイフォン12の撮像素子は1/2.55インチらしい。あまり変わらない。)

といった具合である。

せめて背面液晶の質をもっと良くしておけばそこそこ売れたのではないかと思わせる。ここの再生画像の表示の悪さ(黄色っぽく、コントラスト・色・解像度の再現がどれも萎えるレベル)がカメラ全体が悪いかのような誤解を生ませていて残念。

 

なお、A1000についてはときおり画面中央に赤いゴーストが発生することがある。これは光の入る向きに対してカメラの向きを変えると回避できるのであるが、あまりにはっきりしたゴーストのため諸所記事で叩かれて印象を悪くしている。

A1000を絶対買うなという動画もあったりして概してレビュー評価は芳しくない。そのせいか、1年ほど前に直販で安い値が出たあとはディスコンになってしまった。

(今では中古でしか手に入らないが、その価格は新品最終価格の2倍になっている)

 

また、このA1000は背面のグリグリダイヤルが壊れたので修理に出した。

その時の修理費が2万円。カメラを買った価格の半分近く、その修理費の8割が工賃であった。

たぶん、カメラを組み立てる時も部品代よりも工賃の方が高くつくことだろう。

一方、スマホはその構造のシンプルさから製造費用の多くをCPUの設計と部品に振り分けていることは想像に難くない。

そりゃあスマホでキレイな写真が撮れるはずだ。

 

以上です。