まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その44.A1000 エーセン(A1000)いっとる

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◆出会い

レンズを交換するカメラを触りだすと、その副作用で徐々に発病する「コンパクトカメラが欲しい病」。またかかっててしまいました。場所はアマゾンのホームページ。最初は何気なくソニーのRX100のシリーズを見ていて、ファインダに注目。手持ちのパナソニックLX100はのぞいた時のコントラストと色味がイマイチなんだよなあ、おおぉ、これは有機ELなのか? では期待しちゃおうかな。。とそんな感じでした。でも、前から見ると男前だが上からみると安っぽいなあ。ぶつぶつ。そして、こんな機種もありますよ、としてひっかかったのがこのニコンのA1000です。24mm~840mmまでの35倍光学ズームを積んでいる。そこで一挙にそれまでの思考が飛びました。ファインダどうのこうのよりも「いまどきのコンパクトはスマホにできないこと出来なきゃ、あわよくばD750にもできないこと出来なきゃ、つまり無茶苦茶遠くを撮るということではなかね?」

最近のスマホの内蔵カメラの画質はすごい。これに対抗してRX100の1インチ撮像素子は大きいぞ、ボケるぞ、と言ったところでソコから生まれる写真のボケや解像性能はどうしてもその上のAPS-Cサイズや24☓36サイズにかなわないわけだし、同じカテゴリと言ってもいいLX100のソレよりも物足りない。写真全体としてみればスマホチックな絵にしかならんかも、と有機ELファインダーの事は忘れて何故かスマホへの対抗意識として「拡大なら負けないもん。」が頭の中を占めることに。そう、違う土俵で生きる道をさがす。巨人で5番を柴田と争ったあと代打の切り札に転じた末次のように。今の天皇陛下が幼少の頃にお好きだった背番号38番。

撮像素子が1/2.3インチというのは非力すぎないか、というと、そうは思わなかった。前に使っていたペンタックスの小型ミラーレスと同じサイズです。あのときのペンタックスの画像(画質性能ではない)には満足していたので、フィルムカメラで撮る写真よりはかなり良いだろうと。

ファインダも今どきのコンパクトカメラらしく小さいのがついている。あれだけLX100のファイダがどうのこうのと言ってましたが、もう付いてりゃいいや。でポチりました。実機を触るどころか見ることもなく。ポチッと。

◆見た目と質感:正体がわかったもんね

ニコンのコンパクトでは前にP5100というのを持っていて、その塗装の仕上がりや質感がしっとりとして剛性感も含めてとても良かった覚えがあります。転じて、このA1000も同じかと思いきや否。金属外装ではあるが塗装がヘンにテカテカした梨地で興ざめしました。値段との兼ね合いもあるかもしれないが、ココの質感は案外と買う時の魅力に影響する部分なのでもう少し詰めて欲しかったです。実物を見ていたら買っていなかったでしょう、愛着を持とうという気にさせるものではないから。逆に、見た目に愛着が湧けば、多少の機能的な欠点はなんとか自分でカバーしようとする、あるいはソレはソレとして気にしないものです。ここは残念。

そして、デザインのまとまりについてですが、アレ、これどっかで見たことある。上面の左右でLX100(というか元はコンタックスGシリーズというか)のように左右に段差があったり、グリップのラバーが指先ちょっとの部分だけ貼ってあってしかもそれが上方に向け斜めに切り上がるのでなく長方形にストンと上がっていて見た目を台無しにしているとか。思い出しました。幻の高級コンパクトデジカメのニコンDLです。2016年頃に大々的に開発発表し完成写真までメディアで公開しながら生産に至らなかったカメラ。あれにファインダをつけた形をしている。さきほど述べた塗装質感も含め、全体に煮詰めの甘さを多く見受けるのは、ひょっとして、DLのアイデアや部品の残骸をかき集めてササッと企画でもしたかな、と感じました。

そういえば、チルト液晶の部品およびその作動はとてもしっかりしています。これ、ニコンDLの成れの果てといってはナンだけどそう考えれば納得。反面、DLを出さなかったことは英断だと思った。だって、この質感で高級路線の価格では絶対売れないですから。

◆操作感:いろいろ。人生いろいろ。

起動は一眼に慣れた者からすれば遅いです。コンパクトだからそういうものだと昔は思ってましたし、その範疇の中ではむしろ早い方です。だが、スマホがあまりにも手軽にスグ撮影できるものだから「遅い」と感じてしまう。もうひとつ、そう感じさせる理由は、起動すると最初にチルト液晶に表示されたあとでファインダ-に切り替わる、その切り替わりの動作が間に入るためです。ホンの瞬間ですが待たされ感が伴う。とはいってもLX100よりもキビキビしています。

ファインダは小さいがまあまあ使えます。10年ほど前のデジカメにオプションで3万円くらいで用意されていた外付けファインダよりはよっぽど見えるし、メニュー表示の文字も読めるし、露出補正とかの設定も即座にわかる。想像した以上にいいです。

むしろ、チルト液晶の画質の方が残念な印象は強い。というのは、黄色味が強くて、撮影した写真そのものが汚いかのように感じてしまうからです。液晶の画質設定は明るさしか変えれないので、それならばココも煮詰めて欲しかった。あるいは、製品によってバラツキのあるところなのか。。

操作していてコレはいいと思うのは、レンズの根本にズーミングレバーが円周方向についていること。これでズームできる事が良いのではなく、このバーの設定をズーミングでなく別の操作機能に割り当てることができる事です。ここにホワイトバランス機能を充てると、結果がすぐに反映される電子ファインダの利点を最大限に活かすべく、のぞいたままで手軽にホワイトバランスを選ぶことができるのです。カメラのフォールディングを崩すことなく操作が出来てとても便利です。

反面、操作していて不満があるのは背面についているクルクルホイールです。キャノンの一眼レフだと露出補正ホイールと呼ばれているor勝手に呼んでいる、あのクルクルの操作感がこのニコンのA1000は宜しくない。節度感がないだけでなく、最近は動作が狂ってきました。回転と逆の方向に設定されたり、反応がなかったり。まあ、ここはキャノンの呪いがかけられているようなので仕方ないですね。自分の身にも降りかからないよう、なるべく触らないようにします。

あとは、USBマイクロ端子で充電ができたり、スマホbluetoothWIFIで連携できたり今どき出来ることは普通に出来ています。 やっぱり、液晶が黄色っぽいというのがなんとも残念。

◆画質:ちょっと意外

これはいい。というか、すこぶるいいです。カメラ背面の液晶ではがっかりしますが、それをパソコンでみるととても良くとれています。ただし、ISO感度を800以上にあげると当然アラが目立ってくるので、カメラ内の手ブレ補正も信じてISO400くらいまでで撮るのがいい。そうすると、コンパクトカメラにしては、という注釈なくても十分に見ていて楽しくなる写真が撮れます。

さらに、このカメラの撮影フォーマットはRAWファイル保存もできるのでライトルームでの加工や修正もできます。実際には、RAWフォーマットは4:3のアスペクトで撮影したときのみなので、3:2が染み付いている身としてはJPEGでしか撮ってないのですが、そのJEPGもFINEで撮影したものであればライトルームでチョコチョコするくらいの画質耐性があります。そのチョコチョコをすると、さらに「え、これ本当に1/2.3インチサイズ? 嘘でひょ!」になります。元々の画質として、ライトルームを使おうかという気にさせるものがあります。

そして、それが24mmからグイーンと840mmまでカバーする。というのが凄い。

◆使い所:パースのコントロール

ライバルはスマホ。サッと出して撮るでは負け。ファインダで見れるでは勝ち。圧倒的に勝ちなのはそのズーム域。ここに勝機がある! だって、所有欲をくすぐるという点ではボロ負けですから。

こういう超望遠までカバーするカメラに対し、昔であったらこう自問していました。「そんな遠くを写す機会なんてそうそうあるかよ。鳥とかセブンイレブンの看板とか撮るにしても、レンズが暗けりゃ被写体ブレブレ、手ぶれブレブレで絵になんないぜ。運動会だってブレブレだぜ? しかも高速で動くものにはピント合わんだぜ? 急に江戸っ子だぜ? でも、このだぜの使い方、あってるかだぜ? どこかヘンだぜ? 地方にいる自分ではわかんないだぜ?」でした。

実際、元々の画質の良さを考えてISO400に抑えるとしたらシャッター速度はますます遅くなり、超望遠でなくても普通の撮影域でも天気が暗い環境ではカメラ内の手ぶれ補正に期待せざるを得ない状況です。当然、その能力には限りがあり、近景を撮った場合でもブレ写真は混じってくるわけです。

しかし。どれだけ拡大できるか。の視点が間違っていることに気づきました。撮れた写真のバランスにおいては構図とならんでもう一つの要素、パース(遠近感)が重要なことに気づきました。自分が動かずにズームをジーコジーコして対象を拡大するのでなく、望むパースをズーム域で先に決めてしまい、それ合わせて自分が逆に近寄ったり遠くにいったりするという逆転の写真術。対象にはそれが絵として輝く最適なパースがあるという事実(本当にそうかな。だぜ)。

と勝手に思い込んでからは、気が大きくなりました。そして。

◆最強の相棒:スマホではコレはできない。

そして。三脚。重いモノだとカメラより目立ってしまい、何か棒っ切れみたいのを振り回しているヤバいおっさんにしか見えないからテーブルにおくマンフロットとかの小さな三脚。こいつの上に乗せて、セルフタイマーで撮影すればブレずにキレイに撮影できる。そんなの当たり前だろ。ではあるが、なんせ、それをテーブルの上で840mmまで出来るのだからすごい。逆にテーブルないときは超ど級三脚を持ち歩くかというと、それは自衛隊騒ぎになるからそんなことしません。潔く撮影をあきらめる。こういう日もあるさ、だぜ。というふうに。

またまたスマホと比べるてみるとこのマネはできないでしょう。自撮り棒とかなんとかいったって、アレは手ぶれをテコの原理(ちょっと違う)でよけい何倍にもしているだけだし、しょせん三脚ネジ穴はついてない。やった。勝った!

といいながら、このA1000、三脚ネジ穴が重心からだいぶずれた端にある。スペースの都合で仕方なかったのでしょうけど、この辺りが冒頭で考察した出自を思い起こさせるところです。

◆そして今

ヒュー。あ、冷たい風が吹いてきた。というのは、このカメラは22年初頭現在、生産中止になってしまってますから。売れなかったのでしょう。後継機も出てません。普通、このような超望遠をウリにするカメラは運動会目当てなので、そこでは周りのお父さんを横目に、「チビ、ダディーも負けてないぜ!」を見せないといけないのでちっちゃいカメラがこの路線で売れるというパイは元からしてほとんど無いのです。奮発して一眼+望遠レンズか、見た目が一眼ッぼく見えるけど素子は1/2.3インチのカメラか、ビデオのヒトコマを写真として切り出すか、あるいは、そんなことせずスマホでとって思いっきり拡大トリミングしてヘノヘノモヘジとしか認識できない我が子の写真を年賀状にのせ受け取った側のゲロゲロゲーを年頭から煽るか(今年は3例)、4択のどれかです。

とはいえ、これはおそらくDLの遺伝子を多分に受けついでいたようなので写真機として、特に画質とレンズ横の設定スイッチの点で良くできています。ファインダも値段を考えたら視度補正もついているし使えます。

惜しむらくはやはり、塗装の質感。外装のイメージは大事ですね。似たカテゴリーのカメラでオリンパススタイラス1S。あっちはデザインからして優秀でしたが、プラスチックのチリが粗くてA1000同様興ざめしました。

でも、もう無い と思えば逆に愛おしくなってきた気がします。次に機種を出すときはP5100の再来みたいなのを期待します。

さて、次回はカメラではありません。でも撮影できる。。そういよいよスマホです。