まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その7.EOS ELANの 原点回帰

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◆出会い

EOS1000、綺麗な写真を、設定を自由にいじりながらも、手軽に撮る。そんな一眼レフもあるのだと知って35-135ズームをつけて楽しんでましたが、上カバー外れ事件のあと機械としての信頼性に不安を抱えていた頃に知ったのが同じEOSのELANです。

日本名はEOS100ですが、当時住んでいたアメリカではELANと呼ばれていました。サンフランシスコに観光した折、フィルムを買い足そうとしてカメラ屋に入り、飾ってあるのを見て無性に欲しくなりました。首から下げていたEOS1000を無理やり店員さんに「OH,No~」と言うのも気にせず下取りしてもらって購入しました。1000との大きな違いは、フィルム装填がプリワインディングでないことや、裏蓋にサブ電子ダイヤルがついたこと。これは便利、露出補正がファインダ除きながら親指で簡単にできます。それに、アクセサリーシューの座金が黒く塗装してあったり、グリップのシボが(プラスチック下地だが)細かな凹凸に変更されているなど、高級ではないが愛着の持てる外装をまとっていた事もあげられます。

◆素晴らしいバランス

使用感は非常に優れたものでした。ボディの重量バランスが良く、レンズをつけてもフロント偏重にならずに保持できるので肩に力をいれることなく操作できます。サブ電子ダイヤルがついているので、撮影も早く済みます。私の当時の撮り方ですと、①対象をみてズームリングをまわし画角を決める。②上面の液晶パネルをシャッター半押ししながら見て、電子ダイヤルで露出、サブ電子ダイヤルでの露出決定をファインダ除く前に済ます。③ファインダを除いたら撮影範囲の微調整をし、息を吐く途中でシャッターを押す。

ただ、使いやすさから撮影枚数が増えるにつれ、ずっと使ってきた35-135ズームの画質のアラも目につくようになってきました。それは、望遠側での線の太さです。ズーム全域でもともと線が太い描写ですが、特に望遠側はキャビネサイズに拡大しただけでもどこにピントが来てるのかわからないと思う時もありました。そして。28-105のズームが発表発売されて間もなく、ニューヨークのカメラ店B&Hから電話通販で買いました。つまり、現物を一度もみることなく「これは良く写りそうだ」の直観だけで買ったわけです。で、その直感はあたりました。ネガで撮影してすぐに、描写が細かく色も中庸で万能であることがわかりました。

そして、35-135より短く軽いレンズはELANと組み合わせると重量・操作感とも非常にバランスが良く、どんな対象も思うように撮れる。絞り開放では当時のズームなので周辺光量落ちはあるが、それ以外は満足な結果を残すことができました。ネガフィルムの銘柄の差も明確に出せる性能の高さを持っており、当時は粒子の細かいエクタカラーや彩度が高くシャープであるロイヤルカラーを多用しました。とりわけ、コダックのロイヤルカラーとELANと28-105の組み合わせは、現像する写真屋さんの腕前によらず一定水準以上の結果が出るので気に入って使っており、彩度を求めてポジフィルムを買うということをしなくなりました。

◆キャノン、その原点

中央一点だけのオートフォーカスだけど精度が高く、露出も暴れず内蔵ストロボも良く効くELANと28-105ズームは大変使いよく、結局6年間をメインで活躍してくれました。機械でなく目の延長という道具、自然な道具、これはもともとキャノンというブランドが持っていた原点にEOSの名を加えたとはいえ回帰したことだと思います。そして、人に優しい道具としてのキャノンはいまのデジカメにも引き継がれていると感じます。

◆キャノン、こうであったらば

ただ一つ、使っていての不満がありました。それはボディ耐久性にもう少し配慮が欲しい。ELANの例では二つだけあげますが、その一つはEOS1000でも経験したボディ外板の接合強度の不足。ELANは買って握ってすぐにボディがミシミシいうのを感じました。そこで、外板の合うスキマに瞬間接着剤を流し込みました。こんなことすると、いざ故障というときに分解できなくなるのですが、故障するリスクよりもミシミシ不快感を止める方が先です。もし、接着してなければ1000のようにカバー外れを起こし撮影を台無しにしたかもしれないのだから。 もう一つはファインダの傷。ガラスでなくプラスチックのせいでもありますが、ファインダ表面が擦り傷だらけになりました。ピントがマット面で合わせずらいのはオートフォーカスカメラなのだから当然の妥協と思えるものの、ファインダは撮るときには必ず覗くものであるから配慮がほしかったところです。

28-105ズームでいえば、2段収縮によるのか鏡筒のガタの大きさ。私の求める写りの程度では影響は気にするほどではありませんでしたが、前玉あたりを触るとファインダ像が動くのがわかります。これは結構、使っていて萎えます。

◆相性問題

また、キャノンのせいでは全くないのですがシグマのレンズとの相性の悪さに非常に困りました。どういうことかというと、オートフォーカス信号を受け取らない。それも、ある日、ある朝、突然に。2つのレンズを持っていたがどちら共。一度、オートフォーカスが効かなくなると、それ以降は2度と復活することなくマニュアルでフォーカスを合わせざるをえないが、もともとピント合わせよりも明るさを優先したファインダなので...つまり使えなくなるわけです。純正でないレンズメーカ品を使う際は、その相性も含めリスクがあるのは仕方ないと思いました。

◆受け継がれる操作系

米国でのELANという名は、その後、日本名EOS55、日本名EOS7にも引き継がれました。この2機は初代ELANであるEOS100とは違う上面操作配置をしていますが、いまのキャノンのデジカメのミドル級はほぼEOS100の操作系に戻っています。左側にモードダイヤルがあり、右側に設定ボタンと液晶と電子ダイヤル、裏蓋にサブ電子ダイヤルを備える。いかに、初代ELANがキャノン操作系の本流を先取りしていたかがわかります。特に裏蓋の電子ダイヤルは左目でファインダを覗く者にとっては親指で操作するのに最良の位置にあります。ニコンペンタックスもこれに相当する電子ダイヤルはファインダの右横にあるため、左目で覗く者にとっては自分の右目が操作する親指と干渉しうまく回せない。しかし裏蓋にあれば問題ありません(実際にやってみるとすぐわかります)。

では、なぜ、いまキャノンのデジカメを使っていないのか。それは、電源ON-OFFスイッチが左側にあるからです。ELAN(EOS100)は電源スイッチが裏蓋右側にあり、カメラを握る(=まず右手でグリップを掴む、次に同じ右手でスイッチを入れる)その次にはもう撮影に入れます。しかし、電源ON-OFFが左にあると、両手でカメラを握らざるを得ず、撮影のテンポが一瞬遅れます。今のニコンペンタックスは右手でグリップしてすぐに電源スイッチが入れられるようにシャッターボタンまわりにON-OFFスイッチがあります。しかし。キャノンFTbも左肩に内蔵露出計のスイッチがあったから、この左肩ON-OFFはキャノンならではの別の理由があるのかもしれません。

◇次回:さすがフィルムメーカ。使う立場をわかっている。