まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その26.LX-5 もはや家電ではない

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◆出会い

k20Dというデジタル一眼レフを手に入れてしまうと、贅沢なことではあるがニコンのP5100を予備カメラとおくには少し物足りない部分が出てきました。それはRAW保存ができなかったことです。さりとて、k20DではRAWでなくJPEGばっかり撮っていたわけですが、RAWという3文字に何か特別な響きを感じていました。RAW保存が出来る小さなデジカメがあれば、それはかなり大人な機械に違いない。

そのうえで、見た目がカメラらしいこと、シャッターボタンが大きいこと、ズーム域の望遠側が90mmまであること、そして、電子ビューファインダを後付けでつけれること。究極的には、最初のデジカメショックを与えたLUMIXの一味であること。そんなこんなでLX-5を購入しました。

◆操作感

このカメラの絞りはどこで合わせるかというと、背面の親指のあたるところにダイヤルがついていてそこをグリグリすることで設定します。このLX-5の操作の感心したところは、そのダイヤルを一回押し込んでやると操作対象が切り替わって露出を補正することが出来たこと。つまり、通常は別々のダイヤルに割り当てる絞りと露出補正を一つのダイヤルに重ね合わせているが、その切り替えを別のボタンを押したりせずにそのダイヤルだけで出来てしまいます。これは慣れると結構便利でした。

反面、ISOとかセルフタイマの設定を変える十字型ボタンは使いづらかったです。背面の右側下にボタン類が位置するのは他のデジカメと同じなので問題ないのですが、ボタンに刻印してあるISOなどの文字が銀色のバックの上に色を差さずにそのまま彫り込まれているだけなので見にくいったらありゃしない。これは暗くても明るい日中でも見にくい。

それから困る点としては、起動がやや遅く、撮ろうと思った時にすぐ撮れないことが一つ。やはり手軽な大きさのコンパクトデジカメにはメモ機としての機能も欠かせないことを考えるとここは残念。その他では、ピントがシャッター押す前に先行的に合う便利機能がついているが、そのせいで実際にピントを合わせようとしたときに「合わせにいってるぞ」感がなく、絵を切り取った感触が希薄なこと。

つまり、コンパクトらしい小気味よい操作感を期待すると肩透かしをくらうデジカメでした。

また、レンズ保護がデジカメ恒例のヒャクメルゲ方式ではなく、レンズキャップのつけ外しで行うことからも速写性を狙ったデジカメでないことがわかります。このキャップは一眼レフのレンズのものよりよっぽど高級感があり、その分、紛失しないよう気をつけねばなりません。が、レンズの枠にとりつけて自動開閉する保護バリヤが別売で売られていたので、それをつければキャップのつけ外しも必要なくなります。

このバリヤは最初は喜んでつけてましたが直に外すことにしました。というのは、レンズが繰り出すときにこのバリヤが3つに割れる仕組みなのですが、そのカッコがいかつすぎるのが一つ。そして二つ目は電源offでバリヤが閉じた時に、3枚の板が一つの円に収まるその形、それがどうしてもゼロ戦のプロペラのように見えてしまい違和感がある。せっかく美しいライカレンズを隠してしまうのももったいない。結局、レンズキャップを付けたり外したりして使うスタイルに戻りました。

◆画質

 画質はk20Dと比べても遜色なく、むしろくっきりと対象を浮き立たせるという点ではこちらに軍配があがったかもしれません。さすがLUMIX。あのコンタックスRXに冷や水を浴びせたF-1の画質の方向を更に進化させていることがわかりました。

ただ、作為を持って写真を撮ろうとすると露出を補正したりすることになりますが、ダイヤルの操作性はともかく、背面液晶では日中わかりづらい。そこで。。。

◆ビューファインダ

 アクセサリーシューにポコッとはめる電子ビューファインダが別売でありました。もちろん購入いたしましたが、アクセサリとしては高い値段でした。

これを覗けたおかげで日中でも露出のかかり具合などが把握できるようになったばかりか、当たり前にファインダを覗いて撮るという写真の基本的行為に立ち返る事が、この小さなデジカメで出来るようになりました。ただ、ファインダ内の画素はかなり荒く、露出の濃淡と構図の確認、メガネをデジカメに押し付けての安定保持のためと割り切る必要がありました。また、このファインダは上にチルトさせることでローアングル撮影もできるようになってましたが、その恩恵にあずかるというよりは、顔をデジカメにおしつけて安定保持をしたいのにファインダがピョコピョコ上下してしまって困るという場合の方が圧倒的に多く、結局はアロンアルファで可動部をまるごと接着することで解決をはかりました。

ファインダで覗いて(滅多にとらなかったが)RAWで撮影保存でき、しかも明るい良好なレンズ。まるで一眼レフの世界を、この小さなカメラで実現できることはなかなか楽しいことでした。

残念なのはその見た目です。その大きな要因が電子ビューファインダです。どうしてもファインダというと、前にも後ろにも穴が開いていて、前からみたら後ろが見える、後ろがら見たら前が見える という当たり前のカタチが大脳の下の海馬に定着していたために、前からみてノッペラボウという風貌を受け入れることは難しかった。いや、今でも受け入れられていません。

ここに来ると、自分の依怙地な記憶との闘いになってくるのですが、どうしても電化製品くささがこのファインダがあるだけで助長されてしまったのです。しかも、上から覗いてみえるロゴには明るいナショナルの頃から親しんでいる電器メーカpanasonicの文字があるからなおさらです。

LX-5の形自体は、相当な写真好きの人達が開発したのだろうなと思わせる、非常に写真機っぽい雰囲気があるのに、ここにビューファインダが乗っかると一挙に家電製品に見えてしまう。電子ビューファインダというモノの成り立ちからして仕方ないことではあるが、いっそファインダを内蔵させたソニーのミラーレスみたいな形にしたらLX-5本来の写真機らしいムードを一変させることなく、真っ当な写真機ブランドLUMIXとしてすんなり受け入れられたかもしれません。

◆LUMIXの宿命

F-1の時はあれだけ冷蔵庫っぽい形をしてたのに、LX-5まで代を重ねると他の写真機メーカよりもひょっとしてカメラっぽいのではないかという造形に変貌しました。そうせざるを得ない事情があったように思います。それは、OEM供給していた別ブランドのライカの存在です。ライカの名前に恥じないカタチや性能を実現するために、同じ部品を使っているLUMIXもカメラっぽくなってきた気がします。そして、それはとても良い効果を今までもたらしていると感じるので、この両社の関係が今後も続いて欲しいと思います。

後ろにライカが控えて妥協できない製品づくりをしているためか、LUMIXのデジカメには凛としてスジが通った雰囲気があります。ただ、Panasonicの文字だけは疑問。この文字があるとどうしても家電のイメージが沸いてしまう。字面がSONYとか4文字なら良いが、Panasonicというのは写真関係ではVoightlanderとHasselbradと同じくらい文字が多く、たとえ薄く書いても目立ってしまう。今ではLUMIXとしてブランドが確立できたのだから、そろそろ底面のみにマークするとかできないのでしょうか。ということで、イラストではpanasonicを書いたままにしましたが、実物の方は紙ヤスリで削って文字を消しました。

最後に、ライカ版との大きな違いをいうと、右手保持を助けるグリップ。ゴムグリップの存在です。ライカの方には出っ張りもゴムもないので、恐らく持ちやすさでいったならLUMIX LX-5の方が勝っているかもしれません。

ただ、このLX-5のゴムグリップには難点があって、しばらくするとグリップの上側がペロリペロリと剥がれてきました。接着剤でくっつけて補修したりしてましたが、ゴム自体も伸びるのか、元の形にはおさまらず。ライカ版が採用しなかった本当の理由は永く使われることを考えてこのような不具合が起きてくるのを避ける目的があったためもしれません。

LX-5は綺麗な写真を収めることができ、F-1のようにバッテリが死ぬこともない。LUMIXの進化を感じ、またこれからも進化し続けると期待したくなるデジカメでした。で、何を期待するかというと。全体的なレスポンスの向上、それがあればLUMIXを手に次なるカルティエブレッソンが生まれるでしょう。

◇次回:ペンタックス 人間より頑丈なキカイ。であった。