まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その19.ルミックス F1エンジン搭載

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◆出会い

このLUMIXは何か用途があってというわけではなく、当時のコンパクトなデジカメにしては数少ない3倍標準ズームを備えていたことから目にとまりました。そして、銀色でスクエアな外観。真っ黒で小山のようなかたちのコンタックスに慣れてた身にはそれが新鮮に映り、ライカレンズの称号ヴァリオエルマリートにも惹かれ購入しました。

◆ネーミングの妙

パナソニックのカメラへの関わりを思い起こせば、昔からストロボを発売していただけでなくコンパクトカメラの分野でも他社にOEMできる技術や実績を持っていた印象があります。しかし、いかんせん明るいナショナルから続く家電メーカ、このデジカメも基本のカタチがハコ型なので、冷蔵庫を横倒しにして20分の1に縮めたミニチュアのように見える。その呪縛を解くためにLUMIXという名が効いくるのです。光を意味するLumiとライカにつながるL、それにcontaxやpentaxに倣うかのようなカメラらしい-xの語尾。

このデジカメはそのLUMIXブランドの2代目にあたります。1代目が2001年に出た望遠端70mm相当のDMC-F7。それが次の年にはいきなりF1、F3でもF5でもF9でもなく いきなりF1。パナソニックの自信のほどが伺えます。しかも、このエフワン、新エンジンとして謳う集積回路ヴィーナスエンジンを初搭載。さて、ライカ認可のヴァリオエルマリートを冠した小型軽量マシン、果たして写りはどうだったか。

◆驚きの描写

当時のデジカメなのでフォーマットは4:3しかなく、町の写真屋さんでL判やハガキサイズにプリントしてもらうと無理やり3:2におさめるために上下を切ったものが仕上がってきました。そこは残念であるものの、その写りを見て驚きました。

色が非常に鮮明で透明感もあり、シャープでくっきりしている。コントラストが高いだけでなく中間の諧調のつながりが自然なため、人工的な感じはなくパッとみて誰もがキレイと感じる描写に仕上がってました。

風景や日常の細々を同時にコンタックスRXで撮りスキャナで読み込んだ像を元にプリントしたことあるのですが、キレイなものを見せるという目的でいえばLUMIXは全く負けていません。というか、超えてしまったといっても良い描写です。

もちろん、レンズの開放f値や撮像サイズの制限もありボケ味についてはアレコレ言えませんが、フィルムのコンパクトカメラでは免れない周辺光量の低下もありません。像の歪曲もなく素直に撮れました。RXの写真の方が野太さが残ってました。

細かいことをいえば、暗部でのノイズが目立つとか、コントラストの低い対象では締まりがRXよりも浅くなるとか、いつもオートホワイトバランスが当たるとは限らないとか。。。完全でないところがあるにしても、これだけ写れば上等です。妻がファインダで覗くよりも背面の液晶で見て撮影する事を好むため気の向くままにパチパチ撮ってましたが、それを見ると「あー、確実にフィルムは追い抜かれるな」と思いました。

しかし、では一眼レフまでデジカメにするかというと、どうしてもまだ未完成なモノでありパソコンの周辺機器の一部のような印象を持っていたのですぐ気をひかれるというところまではいきませんでした。しかし、手軽にコトやモノを撮影する、という点では記録以上の感動を収めるところまでコンパクトデジカメが到達したことを実感しました。このカメラの最高画素は324万画素で今のカメラの20%程度ですが、フィルムに対する画質上のアドバンテージは十分感じることが出来ました。

◆使用感

デザインでいうと、先述したように横倒しの冷蔵庫ではありますが後ろから見てレンズが左側にあるというフィルムカメラには真似できないレイアウトをとっているおかげで、小型ながらカメラをささえる右手側に相応の広さが確保され指かかりのポッチもあることから掴み心地は良かったです。レンズを保護するバリヤも、ヒャクメルゲのような多段カバーが不安げにレンズ第一面を覆うものではなく、一枚板がバリヤとしてレンズ全体の前をカバーするので安心感があります。そして、閉じた時の形もカッコ良い。

ファインダはさすがに小さく、のぞくのに快適というものではありませんが、このようなものはフィルムカメラでもあったので特に不満を持つことはない、というか文句をいったらバチが当たる気がしていました。

そんなに不足がないなら使い続けていたかというと、実はそうはいきませんでした。

◆ガス欠多発

ルマンやF1を見ていると、ごくたまにレース後半になってガス欠でそれまで守ってきた順位をフイにしてしまうマシンがあったりしますが、このカメラのF1もそうでした。いきなりバッテリ残量が無くなり、撮影が出来なくなるガス欠に何回も出くわしました。バッテリの寿命かと思い純正の新品パッテリを追加したりしても同じ。そこで、内部部品の故障を疑いパナソニックに修理に出しましたが、戻ってきてもまたガス欠が再発する。フル充電してもいつ撮影できなくなるかわからないので安心して持ち出すことができなくなりました。

その後、LUMIXはバッテリというか電源関係の不具合が多いということが巷で言われるようになり、このカメラもその持病を発症したものと思われます。

今のデジカメにはないズーム式の光学ファインダを備え、小さく、カッコ良く、写りも非常に良かっただけに残念ではありますが、次第に使わない(というか怖くて使えない)デジカメとなりました。なお、いま同じLUMIXのLX-100を所有していますが、こっちの方は電源トラブルに見舞われることなく活躍してくれています。

◆左端にレンズが「あった」ということ

今、このF1やサンヨーのマルチーズのようにレンズが左によった形は見かけなくなりました。フィルムカメラには決してできないレンズ左端配置の利点としては、右側に空いたスペースによりグリップが安定するという以外に、レンズ保護にスライドバリヤを収めることが出来た事があります。しかし、カメラに搭載するセンサがコンパクトといえど1/1.7インチ以上に大型化するにつれ新たな問題が出てきました。

それは、センサに対応するため沈胴するレンズの外径が太くなったことにより、ストロボ発光部をレンズの直上に置くスペースが無くなってしまったことに関係します。左か右かどちらかに配置せねばいけない。そのとき、ストロボを右に配置してしまうと持つ手指によって発行部が隠れるので出来ない。おのずとレンズの左に発光部を持ってくる。ということはレンズは左端に位置することはできず、ストロボ様を優先して真ん中に寄っていくということになります。今のカメラはそうなっています。

それで。 レンズも大きくなったし、ストロボも邪魔されないし、何が問題か?

 「見た目のかっこよさ」です。

立板一枚モノのレンズバリヤを置くスペースが無くなってしまったため、レンズ保護は階段状に開閉するスリットというかヒャクメルゲだけになってしまいました。この魔人の閉じている時の形がどうしても好きになれない。フィルムカメラの中でも、コンタックスT2のバリヤが立板一枚でステキだったのに、T3でこの魔人を採用してしまった途端に神々しさが失われ邪悪なムードに反転。いっそのこと、レンズ保護を交換可能な高強度保護レンズにまかせ、バリヤ機構を無くすわけにはいかないのでしょうか。

※ヒャクメルゲ_超人バロム1に登場した魔人の一人。

◇次回:光を増幅してフィルムにぶちあてる、そんな芸当のカメラがあった。