まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その28.ペンタックスQ 小さなオトナ

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◆出会い

ペンタックスのk-5でようやくフィルムを使わない写真スタイルへの脱皮を果たしたころ、一眼レフを持ち出さないまでも日常をパチリする写真機としてはLUMIXのLX-5がありました。この「5」の連中二人だけでも良かったのに、道楽の延長としてペンタックスのQをただカタチが気に入ったという理由で仲間に加えました。

標準単焦点がついて25千円だったと思います。このQは、発売当初は7マンエンくらいの高値がついてましたが、あれよあれよという間に値下がりしてこの値段になりました。撮像素子がLX-5よりも小さい1/2.3なので写りには期待してません。ウリであるレンズ交換にも期待してません。なにより、マグネシウムをまとった写真機らしいカタチが第一、あとはk-5とほぼ同じ操作メニューで扱えることが魅力でした。

操作メニューに慣れている、ということではなく、ペンタックスの操作メニュー自体が他のカメラと比較してみて自分にはもっともわかり易かったからです。

◆意外に速く写せる

操作そのものに難しいところはありません。そして、コンパクトではあるが全自動だけを指向したデジカメではないので、露出やブラケットやホワイトバランスが一眼レフ同等に設定しやすい。使っていると、押せば写るコンパクトというよりも、撮った写真を見返して設定をいじりながら記憶の像に近づけていくこともできる正真正銘の写真機であることを感じます。

このQで当初期待してなかったが感心したのが速射性です。というのは、つけたレンズが単焦点でもズームであっても、電源を入れてからレンズがジーコジーコ作動しないのですぐ背面液晶で対象をとらえシャッタを押すことができます。機械が作動スタンバイを終えるのを待つ時間が短い。この感覚はsanyoのマルチーズを使っていた時に近い。レンズの先にはフードもキャップもつけず、保護用のフィルタをつけていただけなので電源スイッチさえ入れればすぐ撮れる、レンズバリヤの開閉を待つ時間さえ必要ない。ここでフィルタと言いましたが、この小ささでレンズ前にフィルタやキャップを装着できるのはこのQしかありませんでした。

この速射性は、k-5と同じ一眼形態であるためレンズ動作を待たずに済むことから生まれるわけで、希望の画角で撮ろうとすると時間がかかるコンパクトデジカメに対する大きなアドバンテージです。軽く小さいカメラなら、サッと出してサッと撮れることも大切だと思うので。

◆意外に良く写せる

 Qの撮像素子は一般的なコンパクトデジカメと同じく1/2.3インチしかありません。世にあるその辺のデジカメで写した画像をみると、素子が小さいためにボケないという物理的な要素はおいといて、諧調が狭く色味も薄いものか、あるいはそれをカバーするためデジタル的に彩度をあげシャープネスをかけすぎたものか どちらかにしてもk-5などAPS-Cサイズの撮像素子で得られるものと比べリアル感の無い写真という感想を持っていました。それを承知のうえでQを購入しました。

だが、単焦点をつけてISO100で写した画像をみるとビックリ。それをキャビネくらいの大きさで見る限りにおいては、コンパクトデジカメではなく明らかにk-5同等といえるようなリアル感を持っていました。フィルムカメラとの比較になるがコンタックスT3よりも上です。そして、カスタムイメージをモノクロにして撮影すると、デジカメながらフィルムで撮影したようなコクのある像が得られます。この経験から、撮像素子の大きさによらず、デジカメ内の画像処理のクセや巧さが非常に大切だと学習しました。同時に、撮像サイズが大きいことが全てに優先するのでなく、諧調や色味が自分の満足に足るならば素子が小さい故のシステムの簡素化や近傍撮影での深度の確保、望遠撮影上の倍率上昇などのメリットにも目を向けた方が良いと思うようになりました。ただ、高感度になると素子の小ささゆえの破たんが輝度ノイズとして表れ始め、その限界はさすがに早い。ISO400までが許容して撮影できる限界と感じました。

◆交換レンズの意味

こんな小さなデジカメでも、レンズ交換するとその違いが思った以上にわかって面白いです。単焦点レンズと標準ズームレンズとを、同じ焦点距離と同じ絞り値に合わせて撮影比較してみるとが明らかに単焦点レンズの方が線が細かく諧調もコントラストも高い像が得られ、明確な差を感じることができます。標準ズームだと、LX-5で撮影した方が誰の目からみても明らかに上ではないでしょうか。しかし、一つのレンズで様々な画角に対応できるズームの利便性が必要なときもあるので、そういう時は3つのレンズ(単焦点・標準ズーム・望遠ズーム)を持っていけばことたります。望遠ズームは標準ズームよりも画質が良く、開放絞りもf2.8固定なので、そこそこ楽しめます。レンズ自体も小さいので大変軽いシステムで済みます。

ただ、それならばコンパクトデジカメでも高倍率ズームをカバーする機種はあるので、かえってレンズ交換の分だけ面倒にみえるかもしれませんが、前述しているようにズーミングが電動でなく手動、つまりレンズが勝手に作動し始めることがないので自分のペースで撮影できるところが違います。また、繰り返しになりますが単焦点(prime 01)の描写性能はコンパクトデジカメのズームでは得られない優れたものなので、これを中心に使う機会が自然と大きくなります。

Qを使っていると、単焦点で7,8割の撮影をこなすスタイルが定着しました。画角上どうしても対応できない時に、画質に不満が残るもののズームを持ち出す使い方です。名前は標準ズームでありながら使い方は緊急対応ズーム。これも、画角固定のコンパクト(例えば、コンタックスT3やフジのクラッセ)にはどう転んでもできないことなので、小さいながらレンズ交換できるメリットは実用写真を撮る意味でもあります。

余計な心配としては、Qに標準ズームだけつけて撮影するとLX-5より劣る写真しかとれないので、本来の良さがわからずに終わってしまう方が多いのではないか。1/2.3インチの撮像素子に対するイメージが強い分。これが、1/1.7インチだったら、安かろうではない素子として認知されているので、要らぬ先入観なしにQの画質訴求(標準ズームは除く)の姿勢がより良く理解されたかもしれません。

◆Qならでは衣装合わせ

さて、Qを買う契機となったデザインについていうと、ボディ色を黒にするか白にするか?でずいぶん迷いました。白ボディはグリップ部分がベージュで色分けされており、昔使っていたエプソンのPC-98互換ノートパソコンに似た白を生かした品の良さがありました。ヨドバシのお兄さんが勘定を始めた間際に、やはり黒にしますといって変更しましたが、その理由は、小さいからこそ目立たない黒でよかよ、という内なる声が聞こえたからです。

このQにはサードパーティから意匠グッズが販売されていて、その中で手を出したのはAKI-ASAHIさんがネットで扱っておられる貼り革キットです。これは表面をカバーしている合成皮革というかゴムを自己責任で剥がして、代わりに気に入った色と柄の貼り革を貼るというものですが、その貼り革の精度がペンタックスが作ったのかと思うくらいピッタリでした。黒ボディだと、銀色のレンズとの統一感が無いのですが、その間にダークブルーが入ることで色のバランスがとれてより男前になったと自己満足しました。これに、ニコンがnikon1シリーズ用に展開している皮のストラップをつけると更に色男になります。撮るという写真機本来の機能には全く関係ない衣装直しですが、着ているファッションが決まると撮影する気概が高揚するので実は大切な事だと思います。ところで、ニコンはストロボの制御もダントツですが、カメラを体に保持するストラップの出来も他メーカに比べ抜きん出ているように感じます(現在持っている写真機は全てニコンのストラップをつけています)。

街で撮っていると「素敵ですね、なんと言うカメラですか?」と良く声をかけられました。そこでペンタックスと言っても知らない方が結構いて、なるほどフィルムから写真を撮ってない人がイメージするカメラブランドはだいぶ違ってしまっているのだなと思いました。同じようなことが、自動車でも電気自動車が浸透してくると起こる気がします。

◆Qからみえるペンタックスの有り様

 最後に、Qというかペンタックスというブランドについて、改善して欲しいと感じた点もあげておきます。以下の3つが解消されれば、知らない方に対してこのブランドをより強く推奨できるでしょう=「昔から続くペンタックスというメーカーがありましてね...どうですか、一台。」

①ストロボ制御が芳しくない

Q、それに続くQシリーズも同様だがボディの中でストロボ機構が占める割合はものすごく大きい。そして、発光部がボディからなるべく離れるよう、その構造は大変工夫してあることがわかります。そこまで気を配っておきながら、ストロボの外光とのバランスが良くない。これは一眼のk-3を使っていても感じます。

②ボディスタイル及びネーミングが安定しない

Qの次機種、Q10。これも購入しました。ボディはマグネシウムでなくプラスチックになり意匠も変更。原価の都合上プラスチックを採用し、その質感ダウンの目先を変えるためにデザイン変更した、とは穿った見方とは思いますが、意匠を変えた理由が伝わらない。同様に、10がつく意味。そして、その次がQ7。そのまた次はQ-S1。シリーズとしての名前の付け方の意図がわからない。 ペンタックスは世にないものを出すのは巧いが、その後継をどうすべきかまで考えずに出しているように感じられる時があります。

話はそれますが、Qに比べてQ10のシャッターボタンは大変押しやすくなりました。指の腹をささえる周囲のリングの高さが絶妙に設定してあります。ところがQ-S1になると、そのバランスが崩れてしまいました。指先の感覚は人によって違うとはいえ少々残念です。

③電源まわりが弱い

バッテリの持ちが悪いということでなく、電源の制御に不安がある。Qの後継のQ10を使っていたとき、電池を抜いてしばらくすると日付がリセットされてしまう。このしばらくが1日なら問題にならないが、20分とか10分でリセットされてしまうので、下手すると電池交換のたびに日付を設定し直すというマネをしなければなりません。買ってから1年くらいたつとそういう傾向が出てきました。ボディ内蔵キャパシタのヘタリもあるかもしれないが、露出や画質の設定は消えないので日付に関わる記憶保持の制御がおかしいことが疑われます。この現象、今手元にあるQの3世代後継であるQ-S1でも直っていない。

生産製造の技術や画質性能が秀でたブランドなので、k-5の時に体感した壊れない信頼性だけでなく、使い続ける信頼性がより高まればブランドの認知度もあがり「ペンタックス?what?」は無くなっていくと思います。デジカメにとって電源制御の安定性は、コンタックスのフィルム給送と同様、使い続ける信頼性に直結すると思います。

◇次回: 大いなる手抜き? or 革新的で先取な発想? 撮るためのレンガ。