まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その17.EOS7 視線に注目

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◆出会い

気に入っていたコンタックスRXですが、フィルム送りを始めとして機構部品への心配が出てきた。そこで、以前にEOSエランを使った印象から実用的で作動の安定していたブランドとしてキャノンを選びオートフォーカスカメラを物色して見つけたのがこのEOS7です。FM2、アリア、RXとマニュアルフォーカスが続いたので今度はオートフォーカスにしてみようか、という気分転換の意味もありました。

◆カメラの道具性:EOS100との比較

使いやすさの点では、EOS100と同じく電子ダイヤルが背面の裏ブタにもありそこで露出補正ができるので便利でした。左目でメガネでファインダを覗く場合、電子ダイヤルがファインダの真横にあると自分のメガネと指が干渉して操作できないので、このキャノンのダイヤル位置は大変ありがたいものです。

ただ、なぜかEOS100の方が手にしっくりきました。EOS7は外装が金属でグリップ部分もゴム素材なのでよりカメラの品位作法に沿ったカタチなのですが、使ったときの一体感は100の方に強く感じました。

そう感じた理由を自分なりに振り返ると、canonFTbの初体験が影響してるかもしれません。そのどことなく大味なつくりは、EOS100のゆったりと余裕ある操作感にもつながっていて、中身を感じさせない道具感それかキャノンだという(自分勝手な)イメージを持ってました。ところがEOS7は、下にkissというファミリーカメラがあるためか精密感や凝縮感を想起させる出で立ちをしていらっしゃる。細かくみると、モードダイヤルのロックが別金属であったり、上面液晶のまわりが黒枠でなくメタル色で脚色されてたり、見方によっては部分毎に精細であるようでいて全体としてなんとなくまとまりがない。それが手にとったときの落ち着かない気分につながってたのかもしれません。ところで、この液晶まわり、改良版の7sでは普通の黒枠に変更されたそうです。

◆画質

この頃はフィルムをスキャナで読込み自分の感じたように現像していたので、その素材としてどう写ったかという話でいうとコンタックスRXよりフトコロが狭く感じました。彩度やコントラストをいじると少し破綻が早い印象。とはいえ、そんな極を責める現像での仕上げなど実際にはしないので、全然問題はありませんでした。

◆視線を感じてオートフォーカス

さて、EOS100には無いが、EOS5から続くキャノンならではの特殊機能に視線入力というのがあります。ファインダの中に数か所のポイントが散って配置されており、目でそのポイントを見つめると、その先にある点に対しピントを合わすというもの。どこのポイントに合わせるかを手で操作しなくとも視線がカメラに伝えピントが合う。早いし、カメラの持ち手を変える必要もない。なぜそんなことできるかというと、ファインダ覗くマナコの動きをカメラが赤外線でモニターし、どこを見つめているかを判断している。という。

そういう便利機能の反面、目でピントの山をつかみフォーカスを合わすマニュアルフォーカスへの配慮はなく、明るいけどオートフォーカスしか使えないファインダ、というのがこの当時のEOSの特徴でした。

RXでマニュアルフォーカスの合わせ易さに開眼した身としては、「では、そのオートフォーカスの実力とやらを見せてもらおうか」の期待もありました。EOS100でさえ相当な精度でピントをバッチバッチと合わせていたので、それから5年以上たったキャノンの進化はいかがなものか、と。

で、結果は残念。

オートフォーカスの精度が甘くなった、合うまでの時間がかかるようになった ということではない。鳴り物入りの視線入力ができない。EOS7は7つの視線入力ポイントがあるが、ここに合って欲しいという点をみつめても反応しない。真ん中のポイントだけでピントが合う。

実は視線入力、赤外線でマナコの動きを読み取る時、カメラにとって相性の悪いマナコを持つ人がいるという話がありました。ド近眼メガネをかけているしヤブにらみの一重瞼でもあるから見事それに当たっている可能性は否定できない。しかし、それは蒙古民族をバカにした話ではないか。とがっかりしつつも、まあ、真ん中のポイントで合わせれば写真は問題なくとれるのでそれで良しとしてました。

しかし、コンタクトレンズを装着しても合わないものだから、これはちょっとおかしいぞ、と思い始め大阪にあるキャノンのサービスステーションに恐る恐る出向いたのでした。

◆視線を外してアウトサービス

こちらからの説明がたどたどしかったのか、状況を説明してもサービスの方は異常が発生していると認めようとはしない。確かめてみようとも仰らない。氏が語るには、視線入力は全ての人への適応を前提としたものではない、あるいは、視線のクセをカメラに覚えさせる儀式であるキャリブレーションがうまくいってないだろうからそれを繰り返してみてはどうかと。こちらもキャリブレーションの不備はもっとも可能性が高いので、もう目が充血するくらいに何回も繰り返し済であることを話したが通じなかった。氏の視線の先には、厚ぼったい一重瞼への哀れみのようなものも漂っていた気がしますが、それならそれで「ヌシのようなモノへはこの高貴な道具は対応しておらんのだ」と言ってもらっても構わないのでとにかく検査して欲しいとお伝えしEOS7を置いてきました。

待たされること3週間近く、サービスステーションから留守電が入り受け取りにいくと視線入力が出来ない理由がわかりました。氏いわく、「オートフォーカスセンサに油ゴミがついていたのでふきとった」と。 え? えー! 自分のマナコのせいではなかったのか。受け取ったその場でカメラを操作してみると、不思議なくらいに視線入力できる。では、キャリブレーションをやり直せとか仕切りにこちらの落ち度を疑っていた氏はどう感じたのかというと、「ヌシが油をつけたのではないですか」ときた。新品で買ってワザワザ油をつける人がいると氏は信じているようなので、それ以上関わるのをやめてカメラをひきとってきました。

故障の可能性を疑い赴いた時にはまっすぐに視線を向けていたのに、受け取りの時は終始視線を外していた氏。 オートフォーカスどころかアウトサービスといってもいい対応を受け、カメラは正常になったものの、キャノンという会社への信頼が一挙に消し飛んでしまった瞬間でした。氏の対応ウンヌンだけでなく、油がついたままの製品が市場に流れてしまうのもなんだなあ。そして、それを知らされることもなく「アグアグ、どうせ僕の目は腫れぼったいんだー」と自暴自棄になって親を恨んでは深酒している写真好きが日本だけで53000人もいたそうです。いないか、そんなには。いたら、高須クリニックがパンクしてはず。

◆その後

このサービスの一件があってから、もともと一体感を得られなかったEOS7への愛着は更に薄まり、そして使わなくなり、結局は売り飛ばすことになりました。そして、いつ発病するかわからないコンタックスRX(Ⅱのほう)を、まだ手元にあったコニカBIGミニをまさかのための保険として傍らに副えつつ、スナップに繰り出す日々へと戻りました。

◇次回:いい。いいのだけど、身の丈こえると身につかない。