まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その47.ニコンZfc Cの皮を被ったN

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出会い

このZfc、昔の一眼レフFM2をモチーフにしたという話が伝わり、それならばとヨドバシカメラに触りに行きました。

しかし、実際に手にとると本物(というと、もう一方が偽物っぽく聞こえますが)のFM2とはフィーリングが違う。本物は一つ一つの部品に機械的意味を感じられるキシキシした操作感があるのですが、Zfcはダイヤルをいじってもあまり機械のダイレクト感はなく電子制御を動かすためにいじっている感がありました。こういうのが手に伝わるというのは不思議ですね。その一つの要因は重さが軽い、だから中味に機械よりも基板を手の平で感じてしまったせいかもしれません。

なのに。感触や外形には感動しなかったはずなのに。購入しました。

それは、Z50と比べた時に操作系のレイアウトがZ7Ⅱに似ていたからです。同じように使えるということが決め手でした。

ボディのカラーはサンドベージュにしました。昔、プロのサッカー選手の中に周りは黒いスパイクはいているのに一人だけ白いのを履いている選手がいました。その真似みたいなもんです。

Z7Ⅱに似ているところ

値段で比べたらそりゃあ3倍違うし、向こうは24☓36mm、こちらはAPS-Cなので同列に比較できるものではありません。

しかし、カメラ雑誌の執筆者の中にはZ7系よりもZfc含めたZ50系の方がカメラとしてまとまっているという方もいらっしゃるようです。まとまっているどころか、性能が上とまでも。値段とセンサーサイズを考えると「それはないだろー」と思ってました。

結論をいうと、「それはないだろー」が正解です。Z7Ⅱの方が性能も画質も標準で、Zfcはそこを起点に語って然るべきカメラだと思いました。

では、まず似ているところからZ7ⅡだけでなくZ50との比較もまじえて見ていくことにします。

①背面のスイッッチ配置 その左側

Z50を使っての不満の一つは、背面の左側にあった再生ボタンとゴミ箱ボタンが右側に移ってしまい、そのせいで右側にあった拡大・縮小ボタンが液晶パネル操作に押しやられたりと、かなり変わってしまったことです。暗黙のうちにカラダが覚えていた「撮ったあとの操作はまず左手で」と違うのでとまどってしまう。

ZfcはそれがZ7ⅡさらにはD750とも同じ左側に復活したので自然な撮影フローができます。

②背面のスイッチ配置 その右側

右側に目を転ずれば、一番うれしいのはiボタンが上にあること。これもZ7Ⅱと同じです。この位置にあるとファインダを覗きながらでもiボタン設定を呼び出すのが容易です。静音シャッターやHDR合成とかメニュ階層の深い所に入らずに設定できるので重宝しています。

③上からのぞけばカメラの設定がわかる

ダイヤルがついてるので、シャッター速度とかISO感度とか目盛りでわかって便利。ってところですが、あいにくZfcであってもダイヤルではなくボディの表と裏にあるグリグリを使って設定しているのでその方面での恩恵はあまり感じていません。

何の設定が見えるのが嬉しいか? というとレンズの絞り値が小さなデジタル小窓に見えるのが嬉しい。ニコンのZレンズは開放から性能が出るので、面倒なときはいつでもどこでも何にでも絞り開放で撮るという横着作戦をとっているのですが、ふとしたことで絞りが開放からズレた時でもファインダだけ覗いているとそれに気づかずにいることがあります。それが、この小窓があるおかげで、自然とカメラを構える前に絞り値がズレてないかを確認することができる。そこが嬉しいです。ただ、ちょっと小窓すぎて老眼にはきつい。この上に後付ではれる拡大レンズをどこかのサードパーティが出してくれないだろうか。10セントくらいだったら確実に買う。

④垂直・水平出しの表示が控えめ

ファインダの表示設定をいじり垂直水平マーカというか円を出しておくと、自分の三半規管をこっぱみじんにするほど冷徹に垂直水平を出すことができます。この表示がZ50の時にはNINTENDO DSの戦闘ゲームみたいで邪魔でしたがZ7Ⅱでは控えめになり好感が持てます。そして、Zfcはその控えめタイプになっています。Z7Ⅱと同じように扱うことができます。

⑤充電がUSB-C

カメラに電池を入れたままの充電または給電ができるのもZ7Ⅱと同じです。端子はZ50のマイクロUSBから現在の状況に合わせるようにUSB-Cに変えられています。ここもZ7Ⅱに共通するところです。

⑥画質

Z7Ⅱは滑らかな描写が魅力的です。ZfcはAPS-Cなので流石にそこまでではないですが、Z50に比べたらチューニングが違うのか硬さが取れた絵になっています。

 

では、次にどうしても及ばないところを見ていきます。

①ファインダ倍率

これは使っているものが違うのでZ7Ⅱと較べては酷ですが、狭くなっているので50mmレンズをつけると実物を裸眼でみているときよりやや小さく感じます。

Z7Ⅱくらいの倍率があると50mmでファインダを覗いた時にそのままの大きさを感じることができて楽しいです。それはZfcでは無理です。

なお、ファインダ倍率が大きいことの背反として昔は4隅がケラれると感じてました。なぜか今はそれを気にしなくなりました。電子ファインダなので光学ファインダと違うのかもしれません。

②ホワイトバランスの精度

同じ画像処理エンジンのはずですが、ここには明確な差があります。Z7Ⅱを100点とすれば65点くらいのイメージです。だからといって、それより前に使っていたデジカメはもっと合わなかったことを考えると、ライトルームでいじりさえすれば問題ありません。逆にいうと、それだけZ7Ⅱのホワイトバランスがすごい。オートフォーカスの性能よりも個人的には気にするところです。

③24☓36→APS-Cのクロップ撮影

これはもともとがAPS-CのカメラであるZfcには無理な相談です。しかし、これが使えると単焦点レンズを(画角変化はありませんが)2焦点レンズのように扱うことができるので結構便利です。まあ、こういう軽いカメラを持ち運ぶときには、潔く1画角オンリー勝負でいった方が使い方として合っている気がします。

 

こうして並べてみると、Z7Ⅱに近いところの方が、違うところよりも多く気がつくので、全体的には同じような使い方ができる良い相棒だと思います。と同時に、改めてZ7Ⅱの完成度に感心しました。

最大の欠点

これを言っていいのかどうか不安ですが、言っちゃいます。このシルエットはじぇんじぇんニコンじゃないじゃん。これって、キャノンじゃん。

何がそうさせるかというと、上から見たときのレンズの位置。これが左右の真ん中に来ている。ニコンの一眼レフはレンズは上から見て左に寄っているというのが超カッコイイと思っていた身からしてみれば、これは大きなマイナスポイントです。左側のISOダイヤルのある方が異様に間延びした感じに見えてしまう。ここは7mm以上削ってもらいたかった。

キャノンのシルエットになってしまっただけでなく、実際に構えた時にも右手側にはあまり余裕がなく、左手側にはムダなスペースがあることを手に伝わる重さとして感じてしまうのもなんだかなあ感を出しています。

バリアングル液晶だったりの問題もあるのかもしれないが、かなり惜しい。

グリップの必要性

このZfcには昨今のカメラが備えている右手側のグリップがありません。そのため2万円近い値の純正の追加グリップが用意されています。サードパーティからもいくつか出ています。雑誌やWEBのレビューを見てもグリップ必須のようなことが書かれています。

実際に手に持って操作すると、その必要性は全く感じません。良くホールドできます。なぜそれほどグリップグリップと巷では言われているのかわかりません。合わせているレンズがほとんど18-140ズームだけ、というのも関係するのかもしれません。

左手側の保持が安定するので、右手はボディを親指側から前につつむ感じでカメラを持つことができます。

注目されたお話

普段は一眼を首からさげて歩いていても、周囲にとって近寄りがたいモノを出しているらしく人に話しかけられることはありません。(そのモノが何なのか今だに把握できずにいます。鼻毛? 腹? 脇汗? 人面魚?)

ところが、このZfcを下げていて初めて声をかけられました。神戸の商店街でアメリカ人らしいヤング男性に。SONYのカメラでKOBEを激写していたお兄さんはこう聞いてきた。「FUJI?」「No,this is a NIKON.」「H...m. Nice camera.」嬉しかったです。

総論

良いカメラだと思います。でも、やはりZ7Ⅱは持ったときの重量バランス、ボタンの適切な配置、ホワイトバランスの安定性、そしてクロップが効くなど別格であることを再認識することができました。

一抹の不安

それは、ブラックボディで左端が短くなったバージョンがZfcⅡとかで出てきたらどうしよう。絶対かっこいいに違いない。それに、案外出るかもしれない。でも、もう買いませんよ。わかりませんが。

...

ひとまず、これで1974年から2022年7月現在まで47台のカメラを使ってきたヒストリーは終わります。1台1台に作った人や販売した人のいろんな思いが詰まって世に出てきたカメラ達、ふれてみれば面白くないはずはありません。幸せな時間です。