その4.ツイングの 突き抜け感
◆出会い
ポケットやカバンに簡単に入り、いつでも持ち出せるカメラを探していた時に買ったのが富士写真フィルムのTW-3、通称ツイングです。
この当時のコンパクトカメラは、79年にジャスピンコニカが初めてオートフォーカスを搭載し自動化では一眼レフの先をいっていたものの、付けているレンズは38mmくらいの単焦点に限られてました。一眼レフがレンズ交換できるということは、単一の画角にしばられずに写真を撮れる道具として大きなアドバンテージがありました。
そんな中、コンバクトカメラでも、内部のレンズ機構に1枚のレンズを入れたり引いたりして2焦点を実現するものが出てきます。とはいえ、38mmと70mmの切り替えできるものばかりで、一眼レフのズームレンズで標準化してきていた3倍ズーム比(35~105mm)に匹敵するものはありませんでした。
◆小さくても望遠
このツイングはこれら2焦点カメラの中で、広角側32mm、望遠側100mmの3倍比を初めて実現したカメラです。ようやく一眼レフの標準的な画角範囲をカバーするものが誕生しました。
しかし、その3倍比をコンパクトカメラの薄さの中で達成するためには、沈胴レンズがまだ一般的でなかったこの頃、フィルムを収めるスペースと折り合いつけねばならず大変なことだったと思います。それが暗箱部分自体を小さくする発想に結びついたのか、このツイングというカメラはハーフサイズになっています。また、レンズ自体も小粒なため絞りもf8固定です。
画質の面でのデメリットをとってまで3倍比を必要とするか? という気もしますが、こんなに軽く小さなカメラで一眼レフと同等の画角を得られることの魅力が勝ってました。ハーフより更に小さい110フィルムカメラも健在だったし、写真といえば町の写真屋でネガからサービス判に伸ばすことが大半、特にカラーの画質のほとんどは画面サイズよりも写真屋さんの腕前で決まってしまうと思われていた時代、フォーマットの差は今ほど騒がれてなかったと思います。
◆使ってみて
さて、実際の使用でいうと、広角側では必ずフラッシュが発光する仕組みでどんな環境でもf8のレンズ暗さを補う意図があったと思うが、いかんせん光量が足りず露出アンダの写真が量産されました。とかくハーフサイズで撮れる量が2倍なため、その失敗作の量も倍増するわけです。望遠側でいうと、4m以上しか写らなかったとはいえ色味とかコントラストはしっかり撮れた写真が多い。当時は広角重視で撮影してたが、いまにして思えば望遠側をもっと使えばよかったと思います。
◆40年近く前のリチウム電池
最後に、このカメラは電池交換を自分でできず、内蔵したリチウム電池を写真屋さんで交換してもらうものでした。ハーフサイズでなんでもバシャバシャ撮ることを志向しているようでいて、いつ電池切れになるかわからない度胸を使い手に強いるところが面白いです。なにしろ、電池切れたらタダの箱になってしまうわけですからヒヤヒヤです。ハーフだから沢山撮っても構わないのか、バッテリがいつダウンするかわからないので沢山撮ってはいけないのか。どっちなんだ。誰にも答えは出せない。
ところでこの電池への考え方、「交換は写真屋へ」のフィルムメーカならではの発想がやがて大ヒットする【写ルンです。】に結びついていったのかもしれません。
◇次回:オートフォーカス一眼レフ。これは便利。だけど写真機らしさとは。