まど猫スケッチ

カメラを手に感じてきた雑感を回想する

その9.オリンパスXA 隠したもの

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◆出会い

小さいカメラは楽しいものだと思い、中古カメラ市を覗いていたときに見つけたのがオリンパスのXAです。発売されたころの宣伝が目についていたので一目でそれとわかり購入しました。触ってみた印象は、バリヤーが開いてレンズとファインダが顔を出すというギミックより、この大きさの中で良くまあ絞り優先とマニュアルフォーカスを入れ込んだなあと、その凝縮された造りに感心しました。

◆手の中で

写りを決める絞りとピントは、カメラを構えるとそれぞれ右手の中指と左手の中指が担当することになります。どちらもボタンやダイヤルではなくレバーです。特にピントはレンジファインダの二重像合致方式をとっており、左右に分かれた基線をファインダの中で合わせる操作をするのにレバーはなかなか良い選択だと思いました。まだオートフォーカスがなかった時代ではコンパクトカメラでは固定焦点があたりまえだったので、ライカのように自分で合わせられる機能性はとてもありがたいものでした。右手の親指で操作する絞りも小さいボディを考えると妥当なものです。しかし、この露出は正確に測光されているのかどうか、表示されるシャッタースピードを見ると不安になりました。なぜなら、傍らで使うEOSのELANの露出値より暗めに出ることが多かったためです。

◆レンズバリヤに思うこと

不便ではないが、これは好き嫌いがわかれると思うのはバリヤーの開閉にまつわる諸処です。バリヤーを左手側にずらして撮影状態になりますが、ぶれないようにカメラを保持する左手はこのバリヤーを通して本体を支えることになるのでやや不安定です。また、バイヤーを閉めた状態でデザインが完結しているように見えるせいか、撮影時の見た目はタマゴのカラを割ってしかたなく左側に追いやった感じがしました。

バリヤーがあることで、レンズだけでなくファインダもカバーできるのは良いが、そのためにこれだけ大きなバリヤ-が必要だろうか。必要だと思うけど、これだけ大きくならざる得ないならば、絞りと2重像合致式ピントを小型ボディで操作可能にする魅力は残したままで別のやり方があったような、あるいは別の派生機種もありえた気がします。せっかく内部がカメラとして詰まっていながら、ウリであるバリヤーが逆にそれを隠してしまってないか。

◆少し違和感

また、小ささの弊害かもしれませんが、シャッターボタンの位置が構えて右手の人差し指を置くところとズレていて、「あれ、ボタンどこだ?」と指を動かしているうちに撮るタイミングを逃す恐れもありました。まあ、構え方や握りの仕方は人それぞれなので個人的なことと思います。

◆写した感想

写りはコントラストが高く、色彩は派手に、しかし濁りを伴うという印象です。白いところはトぶように白く、黒いところはツブれるように黒く写りました。私にとっては表現のためのカメラではなく、その小ささやマニュアルフォーカスや絞り選択を通して操作する楽しみを味わうことの意味が大きかったです。

◆後に残したもの

このカメラが残した偉大な足跡は、横開きバリヤーを小型カメラに持ち込んだことです。レンズキャップをとったりつけたりする手間、あるいはレンズキャップつけてる事を知らずに撮影してしまう恐れはこれにより全くなくなり、使い手にとっては大変ありがたいこと。しかし、宝石にも似たガラス玉がついているカメラの機械的な魅力をながめて楽しむ審美的視点からいうと、「この卵のカラはいったいなんだ」となる。せっかく内部は各種機構がギュギュと詰まっているのにそこを空想する前に楽しみの時間が寸断されてしまう。

やがて、バリヤーによるレンズ保護と、カメラの機械的美しさをながめて楽しむ、 この二つを両立させたカメラが出てきます。それは、このオリンパスXAのようにバリヤ-を閉めた時を想定してデザインするのとは全く逆に、バリヤーを開けた時を中心にデザインしたカメラでした。

◇次回:バリヤだけでなく、画質も操作性も。 これが老舗カメラメーカの意地か。